バタフライが再び舞う日(前)
スイープトウショウとウオッカ・・2頭とも牡馬を相手に2000M超のG1を完勝した稀有の牝馬であるが、それ以外にひとつの共通項を持っている。スイープはもちろんだが、ウオッカもまた「トウショウ」の牝系を出自としているのだ。
独特の存在感を保つオーナーブリーダーのトウショウ牧場についてはいつか取り上げたいと思っているが、今回はトウショウ牧場の配合における、ある「試み」を見ていきたい。
ウオッカはシラオキを経た小岩井フロリースカップ系、スイープは1970年代に牧場に入った牝系から出ているが、トウショウ牧場の牝系といえば*ソシアルバターフライを抜きに語れない。
繁殖牝馬の輸入解禁と同時にトウショウ牧場自らがアメリカで見出した*ソシアルバターフライは、天馬トウショウボーイを産んだだけでなく、トウショウを冠したイレブン・ルチェー・ピットらの種牡馬の母となった。さらに孫の代にもサミット、ペガサス、レオ、エイティトウショウら活躍馬や種牡馬を輩出して”トウショウ”の名を世に知らしめた存在であった。
さて、生産馬の血統表をみるとわかるように、トウショウ牧場は基本的にアウトブリードの配合が多く、クロスはあったとしても軽く4×5程度、クロスが交錯するようなゴテゴテ配合はほとんどみられない。また原則として同じ種牡馬を続けて配合することはないようだ。これは血統の偏りを防ぐと同時に、健康的でバラエティに富んだ競走馬を生産することが、オーナーブリーダーとして肝要であるからなのだろう。
そんなトウショウ牧場が1989年春、ある配合を「試験的に」(志村牧場長)試みた1頭を生産する。父トウショウペガサスに母リバーストウショウ。いずれも祖母が*ソシアルバターフライだから、名繁殖バタフライの3×3という強いインブリードを意図的に作り出したわけでった。
トウショウフリートと名づけられたその牡馬は短距離でスピードとセンス溢れる走りを披瀝し、休みを挟みながら条件戦を駆け上がると初オープンなった1993年パラダイスS(T1400M)も圧勝した。結局のところこれが最後のレースとなり、重賞には出走もならなかったとはいえ、ダートも芝もこなし能力の底を見せぬまま種牡馬入りしたのだから、トウショウ牧場の「仕掛け」は成功したと言えるだろう。
名繁殖の濃いクロスを持つ種牡馬・・私のような素人にはしごく魅力的であるが、現実はそう甘くはないということか。1995年にスタッドインしたフリートにはしかし、ほとんど需要がなく、これまで産駒は7頭(うち6頭が自家生産馬)に留まっている。
(続く)
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