1993年12月26日
今まで一番好きだった競走馬はトウカイテイオーだ。
当時はまだ、ネットのような速報性と情報量を伴ったメディアがなく、詳しいことは後に知ることになるが、テレビで流されたデビュー戦の映像にただならぬものを感じた。そして初東上となった若葉Sを観に行き衝撃を受けた。端正なルックス、皇帝ルドルフの仔という血統背景、無段階変速のごとき柔らかな走り・・一目で恋?に落ちた私は、以降すべてのレースを生で観戦することになった。
波乱に富んだ競走成績については、数多の物語が流通しているので詳細は譲る。
とにかく自分にしてみれば、”絶対”を体感した2冠制覇、谷底に突き落とされた天皇賞春の敗戦、見知らぬ人と抱き合って歓喜したJC勝利など、1戦1戦が生々しい感情を伴った忘れられないレースになった。
そしてその日がやってくる。
1993年暮れの有馬記念。人気は菊花賞を圧勝したビワハヤヒデ、JCからの2連勝を狙うレガシーワールド、同年のダービー馬ウイニングチケットと続いた。トウカイテイオーは1年ぶりの出走で4番人気。
私は初めてテイオーの馬券を買わなかった。
私生活に吹く逆風でシニカルな気分に支配されていた私は、「1年ぶりのG1で復活なんてあり得ない」と呟いた。「現実はもっとシビアなものだ」と嘯(うそぶ)いた。追いかけ始めてから、歓喜をともにしてきたソウルホースの馬券を買わなかったのは、最初で最後だった。
そして結果はご存知のとおり。テイオーは終わった、などと言っていた連中のコールはむなしく聞こえ、騒然とする中山のスタンドで私はひたすら泣いていた。
本当は信じたかった。大好きなテイオーが奇跡を起すことを信じればよかった。それができなかった自分が情けなくて情けなくて、涙が止まらなかった
最後のレースだというのに。
もう2度と競馬場で会えることはないというのに・・・・
それ以来、有馬記念だけは他のレースとは違う。1.1倍だろうが100倍だろうが血統がどうだろうが関係なく、自分が好きな馬を買うことにしている。
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