ボスポラスを渡る光
フランスに輸出されてからの産駒Natagoraが今年、G1チェヴァリーパークSなど重賞を3勝してカルティエ賞最優秀2歳牝馬に選ばれ、一躍脚光を浴びたディヴァインライト。来年以降は種付け料なんかもかなり上がるだろうと考えていた先日、トルコに輸出されたというニュースが流れていた。
トルコでは毎年約1000頭程のサラブレッドが生産されている。供用種牡馬の顔ぶれを俯瞰するとなかなかユニークなところもありつつ、近年は英愛やアメリカなどから名が通ったサイアーも次々と輸入されていて、実質的に馬産の中心は輸入馬に占められる結果となっている。2007年の種牡馬リーディング(獲得賞金順)は次のとおり。
1 Royal Abjar (USA) Mr Prospector系 独2000ギニー、1994年独最優秀3歳馬
2 Strike the Gold (USA) Alydar系 ケンタッキーダービー馬(1991年)
3 Sea Hero (USA) Northern Dancer系 ケンタッキーダービー馬(1993年)
4 Mountain Cat (USA) Storm Cat系 ブリーダーズフューチュリティ-G2
5 Sri Pekan (USA) Roberto系 リッチモンドS-G2
6 West by West (USA) Mr Prospector系 ナッソーカウンティH-G1
7 Marlin (USA) Nijinsky系 セクレタリアトS-G1 ハリウッドダービー-G1
8 Bin Ajwaad (IRE) Red God系 デズモンドS-G3
9 River Special (USA) Never Bend系 ハリウッドフューチュリティ-G1
10 Eagle Eyed (USA) Danzig系 アーリントンクラシックS G2 全弟*デインヒル
11位以下にもDoyoun、Distant Relativeなど輸入種牡馬が並び、内国産はようやく30位にGeorge ThomasというNative Dancer系種牡馬が登場する。ただ輸入種牡馬の天下といっても、「世界の趨勢からワンテンポずれた感」があって、それはそれでアジアとヨーロッパの中継点たるトルコらしさは残る。
ちなみに07年2歳チャンピオンPan Riverの父はRoberto系のRed Bishop、ダービー馬InspectorはBin Ajwaad産駒、古馬トップレーティングのSabirliはStrike the Gold産駒。
芝のレースが中心で、ドイツのBussoniが勝った国際レース・ボスポラスカップの勝ち時計が(Softの馬場で)2分31秒2、古馬マイルG1SULTAN MEHMETが良馬場で1分36秒4だから、それなりに力の要るコースということだろう。
生産頭数だけでみれば日本の1/7程度のトルコとはいえ、そもそも3大父系始祖の1頭バイアリータークの起源ともされる大オスマン帝国である。近年のトルコ最強馬Grand Ekinoksのドバイ遠征は結果が出なかったが、積極的な種牡馬輸入や賞金の増額など、競馬基盤整備に対する投資と熱意を鑑みるに、近い将来国際的な名馬が出現しても何ら不思議ではない。
そんなトルコに招かれたディヴァインライトの移動は、決して都落ち的なネガティヴな文脈ではないと思う。エルトゥールル号事件などを通じて親日的といわれるトルコだから、日本語の馬名が付いたディヴァインライト産駒が走る日が来るかもしれない。
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