追悼Kiss
ナドアルシバでは6日、ドバイWCデイの各レース最終プレップが行われた。WCの前哨戦マクトゥームチャレンジⅢで期待したLatencyは上がり馬Jalilの8着。本番で巻き返せるか微妙な感じである。
前哨戦で存在感を示しながらも本番のG1では脇役に甘んじる馬を俗にトライアルホースなどというが、アドマイヤキッスはついにG1を取れぬままこの世から去っていった。
06年の牝馬クラシックは阪神ジュベナイルF勝ち馬テイエムプリキュアが安定感を欠いたこともあり、混戦の呈をみせていた。そんな中で本番に直結するチューリップ賞を快勝したアドマイヤキッスが桜花賞でも1番人気に推されたのは無理もないことだった。しかし本番では、キストゥヘヴン乾坤の追い込みに屈して2着に終る。
続くオークスでも引き続きファンの支持を集めるが、カワカミプリンセスの4着。
秋を迎えてローズSを勝ち、今度こその1番人気で望んだ秋華賞もカワカミの4着に敗れてしまう。
結局、桜・樫・秋華の全てで1番人気になりながらも、勝てないという結果に終ったのだった。
トライアルの勝ち方におつりを見せ、これならという期待を抱かせるものの実はそれが底だった・・というタイプの馬はいるもので、前年はシャイニンルビーがそうだった。桜が1番人気で3着、樫が1番人気5着、秋華は2番人気で18着。かつての話で言えば、ダメジャー・ダスカ兄妹の母スカーレットブーケや、笠松のライデンリーダーも本番では勝ちきれなかったクチである。
ちなみに秋華賞が創設されてから3レースとも1番人気の推されたのは、キッスの他にはアドマイヤグルーヴのみ。グルーヴも3レースとも落としているところまでは同じだが、その後エリザベス女王杯を制するなど単なる脇役には終らない活躍を見せたのは周知のとおりである。
(余談だがいつだったか九段のカフェレストランに入ったら、アドマイヤキッスの母キッスパシオンらの口取り写真やゼッケンが展示されていたことがあるが、どうやら小谷津延弘オーナーの経営する店だったようだ)
キッスは愛知杯を勝利し、牝馬同士ならまだまだG1でも勝負になる力を証明したばかりだけに、急逝は惜しいとしか言いようがない。最も戴冠に近づいた桜花賞、その勝ち馬が「天国へのキス」であったことはなんと悲しい皮肉なのだろう。桜の季節が巡りくるたび、ナドアルシバに散ったホクトベガと並んで思い出す牝馬になるだろう。
安らかに。
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