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奇跡は2度起きた-後編

1996年の日本ダービーを見事に制覇したフサイチコンコルドはしかし、その勝利が生涯最後の勝ち星となった。奇跡のような勝利を得るためには、競馬の神に自らの持つ運を全て代償として差し出す必要があったのだ。

 

そして季節は秋になった。
相変わらず体調の維持に困難を抱えるコンコルド陣営は、3歳馬同士のトライアルを使えずに、オープン戦のカシオペアSをシーズン緒戦に選んだ。ダービーから20週の休み明け、初の古馬戦、+18kg。
そんな条件もコンコルドには関係がないと期待したファンは断然の1番人気に彼を推すが、スローペースで逃げたメジロスズマルに5馬身離されて、初の敗戦となる。

一方、初夏の府中で目の前にした栄冠をコンコルドにさらわれたダンスインザダークは、夏を無事に乗り越えて、菊の前哨戦・京都新聞杯を快勝していた。2着カシマドリームとの差こそわずかだったが、イシノサンデーら春の実績馬たちを完封したレース振りには一点の陰りもなかった。
ちなみにダンスインザダークも、コンコルドに劣らない名牝の出自である。エアダブリン、ダンスパートナー、ダンスインザムードと兄姉妹に重賞馬が並び、近親のスズカマンボ(天皇賞春)、*アラジ(BCジュベナイル、仏グランクリテリウム)、Ajdal(デューハーストS)などが牝系図を彩っている。

こうして迎えた第57回菊花賞。
ダービーに続いて1番人気に推されたのはダンスインザダークだった。フサイチコンコルドが2番人気。
レースはセントライト記念を勝って臨んだ上がり馬ローゼンカバリーが逃げる展開となった。前半1000Mを過ぎるとハロン13秒台のスローな流れとなり、フサイチコンコルドは岡部幸雄が繰るロイヤルタッチと合い並び、徐々に位置取りを押し上げていった。

その後方で1番人気馬が苦しんでいた。外枠から武豊が内に入れたダンスインザダークは、2週目3コーナー過ぎの勝負どころで前に行き場がなくし、徐々にポジションを下げていたのだ。4コーナーを廻るときには馬群に包まれた12番手。「割ってこれるか、ダンス、ピンチだ!」という杉本アナウンサーの実況は、多くのファンの悲鳴でもあった。
粘るサクラケイザンオーに、コンコルドとロイヤルが並びかける。テレビの生放送映像はここで先頭争いに切り替わり、後方インでもがくダンスと武豊は視界から消えた。
コンコルドか、ロイヤルタッチか・・・・誰もがそう思ったその瞬間。
叩き合う2頭を並ぶ間もなく交わすピンクの帽子!
外から物凄い脚で飛んできたのだ、内に消えたダンスインザダークが。
奇跡の脚に言葉を失った。

後日レースを見直すと、内から馬混みの隙間を縫うようにして、ダンスインザダークは加速しながら外に進路を取っているが、あの時は本当に瞬間移動したように見えて「ありえねー」と仰け反った。武豊が珍しく拳を握り締めたのもわかる気がする。

1996年の菊花賞を見事に制覇したダンスインザダークはしかし、その勝利が生涯最後の勝ち星となった。自らの競走生活を終えるという代償と引き換えに、奇跡のような勝利を得たのである。

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