澄んだ空と巻き舌
アグネスタキオンの北限説を書いた以上、ディープスカイを本命にはできなかった。
外差しがあまり伸びていなかったこの日の馬場での鮮烈な末脚は見事で、前日までの肌寒さから一転した日曜日の深く澄んだ空は、まさにこの馬のためにあるかのようだった。
馬主の深見敏男氏は、*パーソナルラッシュやソロシンガーなどで知られる深見富朗オーナーのご子息で、HNKマイルカップのときには「(父より)G1を先に勝ってすみません」とコメントをされていた。その勢いでダービーまで獲ってしまったわけだが、現在敏男氏がJRAで所有している馬はこのディープスカイただ1頭。また生産者の笠松牧場も、この馬の毎日杯が初重賞だそうで、あれよという間にダービーまで上り詰めたことになる。
メジロやマイネルがあれほど情念を燃やしても届かない「ダービー馬」という称号は、ちょっとばかり気まぐれなものらしい。
ディープスカイの母*アビはMiss Carmieの近交を持つ。Miss CarmieはChief's Crown(BCジュヴェナイル等)やCris Evert (NY牝馬3冠)、Winning Colors(牝馬でKYダービー勝利)などの祖となっている名繁殖牝馬で、*タップダンスシチーもこの牝系の出となる。
そのChief's Crownは名種牡馬DanehillDanzig産駒でダートで一流の結果を残したが、自身は父として*エルハーブや*チーフベアハートといった芝の長距離砲を送り出す。*アグネスデジタルの万能さの源泉が母父Chief's Crownの受け口の広さと考えれば、ディープスカイのマイル→2400という振り幅を克服するタフさもまた、このあたりにヒントがあったのだろう。全ては後付けだけれども。
ところでこの日の東京は他にも注目馬が何頭か出走していた。
3R(未勝利戦)では、かつて紹介した<菊花賞馬のトリプル配合馬>エイダイセルリアが勝利した。
また最終レースに組まれた伝統の目黒記念では、一部でカルト的な人気を持つホクトスルタンが淀みないペースのスタミナ勝負に持ち込んで逃げ切り。ハンデ差はあったとはいえ、目標にされながら菊花賞の2・3着馬を抑えたのだから、スルタンと横山典弘を褒めるべきである。
久しぶりに府中のスタンドで日本ダービーを観戦したが、やはりライブはいいすね。
レニー・ハートさんの巻き舌も、ウチパクのバク宙も、四位騎手の「うるせえよ」も、ナマで観られたし。
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コメント
いつも楽しく拝見してます。血統系読み物としては個人ブログというレベルを超えて、読ませる文章No.1かと思ってます。
「そのChief's Crownは名種牡馬」・・・Danzig?ですかね。
投稿: | 2008年6月 1日 (日) 21時38分
失礼しました。
現場の興奮さめやらぬうちに書いたもので、単純ミスです。
投稿: りろんち | 2008年6月 1日 (日) 21時46分