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アスワンに届いた朗報

雨上がりの散歩道、筒状に白く咲き誇る愛らしい花が目に入ったので、庭仕事をしていた方に尋ねると「カラー」という名の植物と教わった。調べてみるとカラーはサトイモ科の植物で、めしべと思っていた部分が花にあたり、それを覆う白い筒は仏炎苞(ぶつえんほう)という葉の一種だそうだ。

カラーはLily of the Nile=ナイルのユリという別名を持つが、そのナイル川沿いの都市アスワンには競馬界のビッグネームが眠っている。アガ・カーン3世である。

 

フランスオークスを無敗で制したのはアガ・カーン4世のオーナーブリード馬Zarkava。血統表を眺めると、この馬がアガ・カーン馬産のエッセンスに満ちていることは、私のようなハンパなマニアにもよくわかる。
ボトムラインを遡るとイギリスで1000ギニーとオークスを獲った名牝Petite Etoileが5代母、そこからイニシャル「Z」の母系が広がっている。97年の仏オークス馬Zaintaも同じ牝系である。(ちなみにPetite Etoile唯一の後継牝馬にはザーラ妃殿下と同じ名を与えているから、それだけ思い入れがあったのだろう)。
さらに遡上していけば、かの「フライングフィリー」ことMumtaz Mahalにまで行き着くという、一族の至宝ともいうべき牝系だ。
Shernazar→Doyoun→Kahyasiと重ねられた累代は、いずれも一族が生産した競走馬であり種牡馬である。母母父がDoyounで母父がノーザン系、そこにZafonicの弟Zamindarという構成といえばDarjinaと同じで、Mill Reefを含んだ重厚な母系にスピードを内包した種牡馬、というのは最近の殿下の配合によく見られるパターン。

母系を重視し、決してハイエンドとは言えない種牡馬を使いつつ、東欧的な生産を続けるアガ・カーン一族の馬産に対する信念と矜持。

「十分な数の繁殖牝馬を所有しているところでは、人気のないマイナーと見なされている種牡馬をいかに活用するか、ということが大命題になっている」
「伝統的な生産で基礎となるのは牝馬の資質の安定性であり、繁殖牝馬のクオリティーを侮ったら、もうこの世界では生きてはいけません」
こういった発言を机上の空論ではなく、長い年月をかけた実践として積み重ねてきたその結果が、名牝(とすでに言ってもよいだろう)Zarkavaをこの世に産み出したのである。

そもそもアガ・カーンは、イスラム教イスマーイール派ニザール派の精神的指導者だ。
カイロに拠点を置いたファーティマ朝から出たイスマーイール派はエジプトとも繋がりが深く、1957年に3世が亡くなった際、エジプトは彼の埋葬地としてアスワンの土地を与えた。そこに夫人が建立したアガ・カーン廟に巨星は眠っている。夫人が亡くなった2000年以降は廟の一般公開も中止となったが、今頃はアスワンの丘の上で、あの日のカラーのような白い棺の中で、Zarkavaの活躍を喜んでいるのだろう。

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