お金で買えない価値
土曜小倉の新馬戦はメガスターダムの仔フォーシーズンゴーが勝っている。九州産馬限定とは言え、わずか3頭の初年度産駒からデビュー勝ちを出したのだから立派なものだ。
九州産馬限定戦はその性格上、出走馬の属性が偏ることは珍しくはない。メガスターダムも九州で供用されているサイアーである。
珍しくはないが、先のレースでは18頭のうちマルシゲが2頭、カシノが5頭、テイエムに至っては6頭だからダビスタなどのゲームでも禁じ手になるほどの多頭出しである。そのテイエム6騎はすべて鹿児島のテイエム牧場産テイエムオペラオーの産駒だった。
G1を7勝という歴史的な成績を残したテイエムオペラオーも、字面上のステイヤー血統が敬遠されたのか種付け頭数も伸びず、種牡馬としては苦戦が続いている。当初は450万だった種付料も昨年は120万円、頭数も23まで落ち込んでしまった。
産駒はこれまでテイエムエースとテイエムトッパズレが障害の重賞を勝っている他、メイショウトッパーとダイナミックグロウがOP入りしているものの、父を彷彿とさせるような活躍馬もなく、正直なところ成功しているとは言えない。件の九州産馬限定戦でも、5・7・8・9・12・13着というグダグダな結果に終っている。
ただし擁護するとすれば、産駒は総じて遅咲きということだ。デビューから現在までの成績をみると、2歳時の勝率はわずか3%だが、それが3歳で5.3%→4歳8.8%→5歳12.5%と右肩上がり。また単勝の回収率も年齢に比例して上昇している。単純に「晩成」とはいえないにしろ、叩き上げタイプである点は間違いない。
スピードや早熟性が最重要視される昨今では、2歳やクラシックでの活躍がないとつい「あれは失敗だった」と断罪されやすい風潮があるが、テイエムの場合はむしろ今後が正念場ということになる。そういう意味で、オペラオーを大切にし、拙速に見切りをつけず自身の牝馬に種付けを続けている竹園オーナーという後ろ盾を持つことは、非常に恵まれていると言えるだろう。
ちなみに古馬になってからライヴァルとして戦い続けた*メイショウドトウも苦しい。現在JRAに登録されている産駒は125頭(2~5歳)いるが、中央で勝ち上がったのは22頭。重賞どころかOP級も出ず、500万条件で走っているシゲルタックが現時点で本賞金の稼ぎ頭という状態である。こんなところまで鼻面をあわせて付き合わなくてもいいのだが、引退式を合同で行ったオペラオーとドトウはよほど仲が良い?らしい。
話をフォーシーズンゴーに戻す。管理する松永幹夫調教師はメガスターダムの主戦だったし、G1の勲章もない彼の引き取り先探しに尽力した張本人であるから、喜びもひとしおだろう。セレクトセールで飛び交う話のスケールに比べればすごく小さな存在だが、フォーシーズンゴーと松永幹夫師の熊本コンビの勝利には、語るべき何かがある。某CM風に言えば、お金で買えない価値が。
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