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剣舞

かつてシンボリ牧場は、生産者としてはヨーロッパ志向のフロンティア・孤高のブリーダーといったイメージであり、馬主としては様々な問題を巻き起こすワンマンオーナー・時代の突破者で、良くも悪くも突出した存在感を誇っていた。

和田共弘というカリスマが逝去した後もそうした残像はファンの間に残っていたものだが、私は「シンボリアメリカン」という馬名を見たときに、もうあのシンボリ牧場ではないんだ、とちょっとセンチな感傷を感じたものだった。

 

さて、今週のアイビスSDには*シンボリウエストが出走する。
この馬はなかなかユニークな経歴なのでざっと振り返ろう。
ウエストはアメリカで生まれ2歳時に来日して藤澤和雄厩舎で馬名登録をされたが、日本では未出走のままヨーロッパに渡った。アイルランドのJ・オックス師の下で4歳5月にナヴァン競馬場でデビュー、1000Mを1分1秒3で快勝する。この後当地で4戦するも勝ち星を挙げられなかった。去勢した彼が再び姿を見せたのは約1年後の2005年11月の公営名古屋競馬(山本健二厩舎)、ここで10戦8勝という安定した成績を残して、ようやく?藤澤厩舎に戻ることになる。JRAデビューは実に6歳5月。500万からの再出発だったが、持ち前のスピードでクラスをあげて7歳夏に初の重賞出走(キーンランドC・10着)まで辿りついた。今回はそのキーンライドC以来の出走であるが、この間に鹿戸雄一厩舎所属に変わっている。
アメリカ生まれのヨーロッパデビュー、さらに地方競馬を経てJRAへと転地転厩の連続である。

*シンボリウエストの母はKenbu。シンボリ牧場がフランスで走らせた牝馬で、カブール賞(G3)を勝ったほか、モルニ賞(G1)では「ワンダーホース」*アラジの2着に、英1000ギニーでも3着に入っている。KenbuはKenmare→Kenmareというフレンチなメールラインで、DjebelやPrince Roseがクロスするなどヨーロッパ色が色濃い。ここにアメリカンなミスプロ系Gone Westを付けて、手筋としてはアウトブリードライクだが、ナスキロが多重にクロスするという構成を作り出している。

全姉の*スイートオーキッドはクリスタルカップ(G3)勝馬。また半兄の*シンボリスウォードも息の長いスプリンターで、6歳時にアイビスサマーダッシュにも出走している(結果は2着)。奇しくも同じ28戦目というキャリアで同じ重賞に挑戦する格好となった*シンボリウエストは、果たして兄の取りこぼしたダッシュ王の称号を、得ることができるだろうか。

新潟競馬場の「アイビススタンド」はそもそもは佐渡に多く生息していた朱鷺(トキ)の英名アイビスに由来している。日本の野生種トキと同じようにヨーロッパ志向の偏屈ブリーダーも時代の波に飲まれて姿を消してしまったが、シンボリ/スイートという冠名にはやはり他とは違う思い入れがある私としては、またルドルフのような「イズム」「執念」の結晶のようなシンボリ生産馬と出会いたい。そんな気持ちは捨てきれずにいる。

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