そのユリはまだ咲き続ける
いわゆる小岩井牝系のひとつであるアストニシメント系は、戦後テンモンやブロケード、チトセホープといった名馬を生んだ名牝系である。中でもアサマユリ(1959年生)の分岐からはマックイーン&デュレンの兄弟やファントム、トーマスなど「メジロ」の名馬を数多が誕生し、*アマゾンウォリアーや*シェリルと並んでメジロ牧場の屋台骨を支える存在となってきた。
近年このアサマユリの母系で目立つのは、「ショウナン」を冠名に持つ馬たちだ。97年のNHKマイルカップ3着のショウナンナンバー、05年新潟2歳Sを勝ったショウナンタキオン、そして02年の高松宮記念などを制して種牡馬となったショウナンカンプ。いずれもアサマユリ発メジロ牝馬経由で生まれている活躍馬である。
土曜日の新潟で新馬を勝ったショウナンカッサイもまた、アサマユリの末裔である。アサマユリの仔メジロハリマ→メジロパンテーラ→メジロフィーシャーときて、祖母がショウナンサンサン。サンサンはショウナンナンバーの姉に当たる馬である。母のショウナンマドンナは*サンダーガルチ産駒で、カッサイが初仔になるようだ。
そしてカッサイの父は同じくショウナン軍団のショウナンカンプ。カンプも既述のとおりアサマユリをボトムラインに持つサイアーであるから、父母ともにメジロハリマをボトムライン4代前に持つという格好になっている。その上でカンプもマドンナも母母父がカブラヤオーで、つまるところお互いの祖母であるヤセイコーソ≒メジロフィーシャーの3×3という、ちょっと目にしたことのない配合になっている。
馬主(国本哲秀氏)とアサマユリ、あるいはメジロ牧場とがどういった関係にあるのかは寡聞にして存じないが、カッサイの血統表を見る限りこの品系に並々ならぬ想い入れがあるのだろう。ちなみに国本氏が所有するカンプ産駒はこれ以外も、ショウナンアローン(牡3)が*ノーザンテースト2×4、ショウナンカザン(牡3)はサクラユタカオーの3×3など、実験的というかマニアックな配合馬が揃っている。
ショウナンカンプはサクラバクシンオーの、現時点でG1勝ちのある唯一の後継種牡馬だ。ただしスプリントで無類の速さと安定感を同居させた父に比べ、安定感を欠いた戦績が影響もしているのか、種付け頭数は伸び悩んでいるのが現実である。マックイーンが晩年にホクトスルタンという「らしい」産駒を出して後継への望みを繋いでいるのに習い、カンプからも*テスコボーイの軽快さを伝える活躍馬が登場してほいし、このドメスティックな父系で世界にアストニシメント(驚嘆)を与えたら痛快だろう。
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コメント
はじめまして。いつも楽しく読ませて頂いております。
私自身ショウナンタキオンについて記事を書いた折り(2005/9/7)、国本氏とメジロの関係を疑問に思ったのですが、その時に読者からコメントを頂きタキオンの祖母メジロハイネは国本氏がメジロから買ったということでした。今回、軽種馬登録協会HPなどで調べてみるとショウナンサンサンの母メジロフィーシャーも国本氏の名義になっており、氏がこの牝系に対するなみなみならぬ思い入れを持っていることは間違いないと思います。
ちなみにショウナンカンプの母ショウナングレイスは国本氏に馬主としての初勝利をもたらした馬で、その仔ショウナンカンプでGIを手にした、そういう意味でも愛着はものすごくあるとおもいます。
投稿: BIRD | 2008年9月 1日 (月) 14時02分
はじめまして、コメントありがとうございます。
なるほどそういう経緯だったのですね。思いつきで書いたエントリだったもので、そこまで突っ込んで調べませんでした。勉強になりました。
ブログも読ませてもらいました。またいろいろ教えてください。
投稿: りろんち | 2008年9月24日 (水) 13時19分