殿下と鈴鹿のそんな関係
永井啓弐氏。トヨタ系ディーラー「トヨタカローラ三重」の会長といわれてピンとこなくても、競馬ファンなら「スズカ」軍団の馬主と言えば通りがよい。生まれ育った土地によほど愛着があるのだろう、冠は「スズカ」の他に三重をもじった「スリー」や三重+鈴鹿で「サンレイ」など、地元の地名に由来するものばかりである。
その永井氏の持ち馬だったという話は聞いたことがないが、1995年のオーストラリア産馬にSuzukaという牝馬がいた。父はNorthern Dancer系のNight Shift、ボトムラインは代々に渡りオセアニアに根付いてきた牝系である。
これだけでは地名なのか人名なのか、そもそも日本語なのかも判然としないが、Suzukaが2000年に生んだ牝駒(父Quest for Fame)がNagoyaと名付けらているから、やはり「鈴鹿」だったのだろう。Nagoyaはおそらく未出走で繁殖入り、そして2005年に生まれた仔の名がAichi。鈴鹿→名古屋→愛知、というわけだ。
そのAichi、6日にフレミントン競馬場で行われたG3のDanehill S(3歳・芝・1200m)を制して重賞ウイナーとなった。Aichiは父Strategicのせん馬。StrategicはNearcoから分岐したShowdownがオーストラリアで種牡馬として成功し、当地でラインを伸ばした父系になる。*セトノゼディタブがいる程度で近年日本には馴染みの薄い系統だが、Showdownの父*インファチュエイションはかつて日本でも供用されていたという繋がりはある。
Aichiは日本関係者が馬主か?という推測は間違いとすぐ判明、オーナーはモハメド殿下のダーレイグループ。2着もダーレイの馬で、ワンツーフィニッシュだったようだ。
日本でもさまざまな言語を馬名にするように、海外でも日本語の馬名はさほど珍しくはない。歴史上で名を残したところではNative Dancerの母がGeishaでその母がMiyako。現在ではオーストラリアから欧州にトレードされた名マイラーHaradasanが、ファイティング原田氏に由来することは有名だ。またイタリアの鬼才フェデリコ・テシオはオーナーブリード馬に芸術家の名を拝借することがあり、Nearcoの半弟Nakamuro(伊ダービー2着)は日本の書家・中村不折だったという説もある。
永井氏の代表馬サイレンススズカも、無事であったら「欲しい欲しい病」モハメド殿下が触手を伸ばしただろうか。殿下の競馬に注ぐ情熱と富の量はハンパじゃないが、それだけで全てが手に入るわけではない、と気付いているだろうか。
Aichiは<愛を知る>と知っているだろうか。
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コメント
始めまして。
サーフィンで辿り着き、
面白いので過去のエントリーを遡ってましたら、
>Aichiは<愛を知る>
僭越ながら、<知を愛でる>では?
全体的に素晴らしいので、気になりました。
投稿: potoooooooo | 2008年9月22日 (月) 08時33分
はじめまして。
お読みいただきありがとうです。
さて「愛知」ですが、ご指摘いただき改めて調べてみると、どうやらかつての地名「年魚市潟(あゆちがた)」から由来しているという説が有力のようですね。これは私も知りませんでした。
「愛を知る」というのは資金にモノを言わせて有力馬を入手するモハメド殿下に対する一つのレトリックですので、ご容赦ください。
投稿: りろんち | 2008年9月23日 (火) 10時04分
殿下には是非次に、
「Ohari」(「Owari」ではなく)
をお願ひしたいです。
投稿: potoooooooo | 2008年9月23日 (火) 19時21分
送信後気付きました。
「Wofari」が相応しいですね。
投稿: potoooooooo | 2008年9月23日 (火) 19時27分
Aichi自体はウッドランズが育てて来た血統で殿下はまったく関係なく一括購入したうちの1頭ですので思い入れなしでしょうね
投稿: jazz | 2008年9月25日 (木) 12時44分
そうですね。
殿下が特定の母系なりに思い入れを持って育てるタイプのブリーダーであれば、今のような「大人買い」はしないですからねえ。
投稿: りろんち | 2008年9月25日 (木) 19時33分