しなやかにして果断~ヤマニンの流儀(後)
もちろんヤマニンが導入してきたのは父系の血だけでない。
Danzig産駒の牝馬*ヤマニンパラダイスは母もアメリカG1馬という良血に恥じない走りで、1994年の阪神3歳牝馬S(G1)を制した。競走成績はやや尻すぼみに終った感があったパラダイスだが、繁殖としてもセラフィム(京成杯・種牡馬)やアルシオン(阪神JF2着)らを産んで存在感をみせている。
またケンタッキーオークスなど10戦8勝、1986年エクリプス賞3歳牝馬チャンピオンに選出された名牝*ティファニーラスを導入した際は大きな反響を呼んだ。
*ティファニーラスは直仔に目立つ活躍馬が出ずに心配されたものの、孫世代で日本の名馬とのコラボによりヤマニンシュクル、ヤマニンメルベイユなどの花を咲かせて、大樹に育つ期待が膨らんでいる。メルベイユを筆頭に先週の府中牝馬Sに出走した3人娘は上位に食い込めなかったが、菊花賞にもキングリー、リュバンが出走を予定している。前者は祖母が*ティファニーラスであり、後者はヤマニンセラフィム産駒で母系にはヤマニンスキーの名も見ることができる。 招き入れた血は一過性で終ることなく、ヤマニンの現在に根付いている。
ヤマニンをヤマニンたらしめているものは何か。
ヤマニンアラバスタが新潟記念(05年)を勝った際、*ゴールデンフェザント産駒で*フォルティノ3×4というアラバスタの血統について土井睦秋は「サンデー全盛の時代に捨てられない血統」「マーケットブリーダーでは考えられないでしょ」と述べている。まさにオーナーブリーダーとしての気概と矜持そのものである。
その上で、自己の生産馬などの特定の血に拘りすぎることなく、時流を読んでは身を翻すことのできる適応力と、海外の血を導入するにしても臆することなく思い切り踏み込んでハイエンドのそれを持ってくる決断力とが、その本質ではあろう。 しなやかにして、剛毅果断なのである。
あれから30年の年月が経とうとしている。日本でも二大政党制が現実味を帯び、広島市民球場に替わる新球場が建設され、携帯音楽プレイヤーはソニーではなくアップルが覇権を握っている。*ノーザンテーストも*サンデーサイレンスもこの世を去り、ダーレイが日本で生産をする時代となった。
屋号である「ヤマニンベン」にちなむ冠を掲げた軍団が放ついぶし銀の輝きはしかし、色褪せるどころか、時の流れを研磨としてその輝度を増しているのである。
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コメント
読み応えがありました!
私はヤマニンファンなので、牧場の血統を明快に説明して頂けて、分かり易くてよかったです。
良かったらこの文章、私のホームページに転載させて頂けると嬉しいです。
他のヤマニンファンにも、喜んで貰えると思います。
良ければご連絡下さい。
ではでは。
投稿: なおや | 2009年1月10日 (土) 11時22分