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自由と孤独

勝負事の”流れ”、引き際の大切さ、リスクを取るということ、ギャンブラーには向かない自分の気質・・・・競馬から学んだといったら大げさかもしれないが、学校では教えてくれないそうした様々なものを体感できたのは、やはり競馬場で悩んだり考えたり喜んだり悲しんだりする中からだった。

かつてのホームグラウンドである府中に、この秋初めて行ってきた。飾り気の無かったスタンドは改装工事を経て南欧風に衣替えし、禁煙となり、ファストフード店やレストランが軒を並べている。そこはすでに昔の荒涼とした雰囲気は失われているが、一般席で冷たい風に吹かれていると、それでも初心を思い出す。

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レースはさておき。
4コーナー前のメモリアルスタンドよりさらに東側に乗馬センターがある。
寒空の土曜日とあって流石に空いていた今日は、体験乗馬の列も伸びてはおらず、2頭の乗用馬が親子をのんびりと乗せて歩いている風景がほほえましい。

この日は2頭の元競走馬が展示されていていた。93年生まれのメジロスティードと99年生まれの*マチカネリュウセイである。前者はメジロアルダン産駒で、98年BSNオープンを勝ち、翌年のAJCCでも3着に入るなど29戦7勝した活躍馬だ。またEl Prado産駒の後者は48戦6勝、準オープンではトウショウシロッコあたりとも差のない競馬をしていた。

鼻先をなでても両馬とも悠然としていて、穏やかな瞳は吸い込まれそうな深みを湛えている。
遠くに観衆のざわめきが聞こえなければ、ここが競馬場であることを忘れてしまいそうだ。

資料によれば10月1日現在、13頭のサラブレッドが繋養されている。日経賞(G2)を勝ち有馬記念にも出走したサンデー産駒ユキノサンロイヤルや京都金杯(G3)のビッグプラネット、オープンで活躍したアルスブランカなどだ。またリストにはまだ載っていないが、厩舎を覗いてみると先月登録を抹消されたばかりの*カフェベネチアンの姿とネーム版も見えた。近く仲間入りするのだろう。

種の淘汰という意味でいえば彼ら(皆すでにセン馬)は子孫を残すことの出来ない敗者なのかもしれないが、しかし全く違う文脈での幸せがそこにはある。

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10代後半から20代前半にかけて、自分に何ができるのか、これから何処へ向かうべきなのかが解らずに苦しんでいた。とにかく自信が持てず、他人の評価と世間の常識ばかりを気にしていた。

府中の杜で、仲間とあるいは独りで笑い悲しみ喜び怒り、自由と孤独を知った。そして自由と孤独とが表裏一体であることを知り、前を向いて歩いてゆく術を知った。
今だって立派なオトナとはとても言えないけれど、だからここまで歩いてこられたのだと思う。
初心を思い出すために、ときどき府中の風に吹かれに行く。

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