スーパーソニックをもう一度
2000年にパリ郊外のシャルル・ドゴール空港で起きた大事故がその大きな契機とはなったが、コンコルドの廃止はすでに商業的な失敗によって避けられざるものとなっていた。しかし超音速で運行されたコンコルドは、まさに「夢の飛行機」という形容そのものであり、あるいは速さの象徴としてひとつの時代を作った存在ではあった。
超音速旅客機の名を持つフサイチコンコルドは、わずか3戦目のキャリアで日本ダービーを勝った天賦の才ほとばしる名馬だ。コンコルドを追う様に半弟のミラクルアドマイヤやボーンキングも種牡馬となったのは、兄の活躍のみならず、祖母に英オークス馬Sun Princessを持ち、近親にもSaddler's Hall(コロネーションC)やPetrushka(愛オークス・オペラ賞)らが名を並べる良血というバックボーンも加味されてのことである。
さて、ミラクルアドマイヤとボーンキングの兄弟だが、今般供用されていたブリーダーズスタリオンステーションからの退厩が発表された。
*トニービン産駒のミラクルアドマイヤは、数少ない初年度産駒からカンパニーが出て一躍人気種牡馬となり、04年には170頭もの種付け数を誇った。しかしその後は活躍馬らしい活躍馬が出ず、05年以降は77頭→31頭→15頭→11頭と急降下。V字回復ならぬ逆V字凋落の軌跡を辿ってしまい、ついに種牡馬引退となった。
一発屋だったのか、ソレらしく言えば一子相伝なのか。カンパニーがもし種牡馬になったらちょっと応援してみたい。
ボーンキングは<松国厩舎・サンデー産駒・コンコルドの下>というブランド馬で、実際に京成杯を勝ったときには01年クラシックの主役として期待された名血馬だ。しかしダービー4着、春天4着などの善戦はしつつも、大きな勲章は結局獲れずに種牡馬となった。初年度(06年)が65頭→23頭→12頭。結果が出る前にこの数字の推移は、種牡馬界のシビアな現実を表しているとも言えようか。ボーンキングは引退ではなく、海外へ輸出される予定とのことである。
なお同じブリーダーズSSからはDanehill産駒のG2ウイナー、エアエミネムも海外に渡ると報じられている。日本で走ったDanehill産駒の中ではファインモーションに次いで賞金を得た馬(牡馬ではNO1)である。<種牡馬の父>としても優秀なDanehillだけに期待されたようだが、44頭→37頭→28頭→17頭と暫減傾向にあった。
ボーンキングとエアエミネムの渡航先はまだ公表されてはいない。個人的には、SSの中では重厚さとスタミナを備えたボーンキングは、母系の出自でもある英・愛に行って欲しいなと(世界に広がるSSも英愛はまだ種牡馬がいないはず)。またエアエミネムは、月並みではあるがDanehill天国のオセアニアが合いそうだが、どうだろうか。
超音速旅客機コンコルドは日本にも輸入される計画があり、日の丸がペイントされた機体デザインまで内定していたものの、結局は別の機種導入によって幻に終ったのだという。片や日本で飛行した賢兄フサイチコンコルドはからはブルーコンコルドやバランスオブゲームなどの活躍馬が出ているが、父を髣髴とさせる才気あふれる大物を出して、もう一花咲かせて欲しいところ。
<コンコルド>が過去の遺物の象徴となるには、まだ早い。
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