プリンシパルの系譜
'09新種牡馬外伝 - *ストラヴィンスキー
Northern Dancer(北の踊り子)という馬名からのインスピレーションによって、バレエに由来する名を持つ多くの名馬が生まれたのは周知のところである。「神の道化」といわれたヴァーツラフ・ニジンスキーを始めセルジュ・リファールといったダンサーたち、あるいはサドラーズウェルス(バレエ団)。さらに彼らからも多くのバレエ馬が生まれている。
ソ連に生まれたルドルフ・ヌレエフはキーロフバレエ団のソリストとして活躍したが、1961年に亡命し、以降はイギリスのロイヤルバレエ団を中心に世界各国で活躍したダンサーだった。もちろんNureyevもこの特別な(母の名がSpecialなだけに)ダンサーから連想された馬名ということになる。
デビュー戦でG3を圧勝し仏2000ギニーは進路妨害で失格、3戦2勝というキャリアで現役を終えたNureyevは、しかし種牡馬として失地回復、大成功を収めるのである。Miesque、Zilzal、Spinning World、Theatrical・・80~90年代の欧米競馬シーンにおける活躍馬は枚挙に暇がない。
日本にも多くの競走馬が導入されたものの、直仔でG1を勝ったのは*ブラックホークと(海外から参戦した)*ハートレイクに留まった。スピードはあるのだが<一瞬の斬れ>というよりは<持続する速さ>をその特徴としていて、日本の軽い馬場では*ロードキーロフやレガシーハンターなど、好素質を持て余しているような産駒も散見された。
ただし種牡馬の父としても優秀だし、本邦でも孫世代に*ヒシアマゾンやワンダーパヒュームなども出ていて、使い方によっては可能性の大きい父系には変わりはない。Nureyev後期の代表産駒で、スプリントG1を2勝した*ストラヴィンスキーは、アメリカとニュージーランドで新種牡馬リーディングにも輝いた期待のスピード系種牡馬である。
もちろん彼も、ロイヤルバレエ団に参加し多くの前衛的な作品を産み出した作曲家をその名の由縁とする。
すでにサイアーとして稼動している*ストラヴィンスキーはオセアニアでG1を含む重賞馬を続出させ、日本でも*コンゴウリキシオーや*アンダーカウンターらが活躍しているから、全くの未知数である他の新種牡馬とは立場が違う。まあ基本的には芝ダート兼用のマイラー種牡馬で、地味だがアベレージが高そうだから、一口で持ちたいタイプである。
ただ、本当に自分が期待したいのは「びっくり箱」だ。
*ストラヴィンスキーには「灰色の幽霊」ことNative Dancerを4×4・5のクロス(さらにRaise a Native≒Natalma3×4)がある。Native DancerといえばオグリキャップやSea Birdなど、突如スーパーホースを出す意外性だ。
個性的で型にはまらない産駒を送り出して欲しい、一つの作風や意匠に固執せず生涯にわたって様々な音楽を生み出した、イーゴリ・ストラヴィンスキーのように。
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