時を超えて旅は続く
'09新種牡馬外伝 - *アルカセット
リヒャルト・シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』はニーチェの同名著に影響を受けて創られた交響誌で、何よりも映画「2001年宇宙の旅」のオープニングにおいて用いられた導入部が有名だ。
ツァラトゥストラとはゾロアスター教の開祖ザラスシュトラをドイツ語読みしたものであり、かつて西山牧場で供用された*ザラズーストラも、表記が異なるだけで言葉としては同じである。
*ザラズーストラは1951年アイルランド産でSwynford系×Swynford系という重厚な配合。愛2冠(ダービー&セントレジャー)や20FのアスコットGCなどを勝った一流のステイヤーではあったが、一線級の揃った凱旋門賞では完敗している。
引退後は種牡馬となり、アイルランド供用時代には愛オークス馬Agar's Ploughとの間に英2歳牝馬チャンピオンとなったMesopotamiaを、後年日本へ輸出されてからはカツタイコウ(目黒記念・天皇賞(春)2着)などの父となった。
父系としては彼我いずれでも発展しなかったが、上記Mesopotamiaから広がった母系にはその後、芝での活躍馬が多数出ている。名中距離馬Halling、いずれもカドラン賞を勝ったMolesnesとSan Sebastian、Cherokee Rose(スプリントC)、Danish(QEⅡチャレンジC)などである。
そしてMesopotamiaから4代目、ドイツの重賞で入着歴のある*チェサプラナという牝馬がKingmamboを相手に産んだのが、*アルカセットということになる。
*アルカセットがJCでマークした2分22秒1というタイムは、オグリキャップと*ホーリックスの伝説的な叩き合いで生まれたレコードを、ついに破った破格の時計だった。デットーリの全く隙のない騎乗と共にこのレースの立役者となったのが、1000mを58.3→マイルを94.0というおよそ2400mのレースとは思えない暴走気味のラップを刻んだ*タップダンスシチー。
1956年の凱旋門賞で*ザラズーストラらを歯牙にもかけず楽勝した名馬Ribotの末裔は、49年の時を経て今度は貴重な*ザラズーストラの血を持つ*アルカセットの激走をアシストしたのであった。
代表産駒の多くが良血牝馬との間に産まれていように、Kingmamboは配合相手のポテンシャルに正直なところがある。*アルカセットもまたヨーロッパで育まれた良質牝系から出ており、クラシックディスタンスでの破壊力は*エルコンやキンカメのそれと共通するものであった。
その重厚さが「鈍重」に出ないか、という点の危惧がないわけではないが、高速馬場への適性も示したし、またForli5×5のほかにThong≒Ridanの5×5やなどちょっと面白い仕掛けもあったりする。
*アルカセットが活躍馬=スターチャイルドを産み出す”配合のモノリス”が何であるのか?生産者たちの「配合という宇宙の旅」は始まったばかりだ。
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