キュアノエイデス
'09新種牡馬外伝 - *バゴ
紺、水色十字襷、袖水色縦縞―
この勝負服が、明るい日差しを浴びてコバルトブルーに輝くエーゲ海をモティーフに創られたことは想像に難くない。Nureyev、Miesque、Kingmamboらの競馬史に名を刻む名馬のオーナーブーリーダー、スタブロス・ニアルコスは、ギリシャの豊かな海の恵みによって財を成した海運富豪だったからだ。
スタブロスは絵画のコレクターとしても有名で、1996年に他界した後のコレクションはスタブロス・ニアルコス三世(パリス・ヒルトンの元カレ)に受け継がれたそうだ。その全容は明かされていないが、コレクションに含まれると噂される作品にゴッホの『タンギー爺さんの肖像』がある。
『タンギー爺さんの肖像』の背景には歌川広重らの浮世絵が描かれていることで知られ、欧州文化圏におけるジャポニズム運動の象徴としてもしばしば名が挙がる。その浮世絵を見て初代スタブロスは、遥か遠い国・日本にどのような想いを抱いていたのだろ。
競走馬を通じてのニアルコスと日本との関連でいうと*ヘクタープロテクターがそうだった。社台グループの下で種牡馬となったヘクターはもともとはニアルコス家の生産所有馬で、日本産馬で史上初めてヨーロッパの重賞を勝ったリムノス&初めてG1を勝ったシヴァの兄妹も、ニアルコスファミリーが所有牝馬を日本に送って生産した*ヘクタープロテクター産駒だった。
2004年の凱旋門賞馬で、翌年のJCを最後に引退して本邦で種牡馬入りした*バゴにも、ニアルコス家から繁殖牝馬が送られている。07年産が4頭、08年産で3頭の産駒が生まれ、すでにフランスへと輸出されているようだ(最初は「社台(白老)がJBBAの種牡馬を付けてるなんて珍しいネ」なんて思ったら、そういうことだった)。
譲渡後も一定数の種付け権利を保有する、なんていう特約条項が付いているのだろうか。
まあいずれにせよ、ヘクターに負けず劣らず名牝系の出である*バゴには、手放したとはいえニアルコスファミリーも期待しているということではあろう。父のNashwanはNayefやディープインパクトと同じくエリザベス女王のHighclereを祖母に持つ名牝系の出でRose RedやFeolaの牝馬クロスを持つ。
また母系は祖母が仏2歳牝馬チャンピオンのCoup de Genieで近親にMachiavellianにExit to Nowhereらが並び、Northern Dancerの母Natalmaのクロスがあるこれまた名門。配合マニアからすれば料理のしがいがある最高の食材、というところだ。
ただ、あまりにコッテリしているゆえ日本の調味料や素材と上手く合うのか?というところで、配合が難しい1頭でもあるのだろう。個人的にはフィリーサイアーというか、将来的に母系に入って非常に面白そうな血統ではと感じる。
ギリシャと同じく海に囲まれた国・日本で、<紺、水色十字襷、袖水色縦縞>の名血馬がどのような結果を残すのか、注目したい。
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