叢雲
'09新種牡馬外伝 - スパイキュール
1989年に輸入された繁殖牝馬*クラフティワイフは、13代母のBay Leafに遡るまで代々アメリカで育まれてきたボトムラインに、これまたアメリカ色の濃いサイアーであるCrafty Prospectorを付けて生まれた栗毛馬だった。
初仔のブリリアントベリーは短い競走生活で3勝をあげて素質の片鱗をみせ、また2番仔のビッグショウリはマイラーズC(G2)を制した。いずれも父が*ノーザンテーストだったことが、その後の種付けにも影響したと想像するに難くはない。
テースト×ワイフの配合は以降も、イブキハイシーザーやキョウエイフォルテ、ビッグテーストなど、ダートや障害戦を中心に幅広い分野での活躍馬を輩出した。またブリリアントベリーは母としてもカンパニー、レニングラード、ニューベリーといったオープン馬を産み、これまた質の高さを示しているところだ。
そんなわけもあったのか、社台グループにあって*クラフティワイフは珍しく*サンデーサイレンスを付ける機会が巡ってこなかったのだが、唯一の出会いで誕生したのが2000年産、後にスパイキュールと名付けられる牡駒であった。
*クラフティワイフの仔で初めて関東所属(藤澤和厩舎)となったスパイキュールは、ダート戦において7戦7勝と底の知れない強さをみせた。ダート1600万条件あたりには「この先には行かせないぜ」と言いそうな歴戦のツワモノや門番みたいな存在がゴロゴロいて、素質だけで500万→900万を連勝してきても、ここで壁に跳ね返されるというパターンも結構あったりする。しかしスパイキュールは準オープンどろろかオープン(ベテルギウスS)でもローマンエンパイアあたりを相手に楽勝したのである。この先どこまで、という期待が膨らむのも当然だ。
しかし―
月に叢雲、花に風。
自分も一口馬主をやっているから、気持ちはわかる。
さあこれからというときに突如訪れる叢雲(むらくも)が心を暗く覆う。
期待が大きければ大きいほど、その知らせに言葉が出ない。
05年2月4日。根岸Sを前にした1月26日の調教中に右第3指骨を骨折。競走能力喪失、引退となった。
明かされなかった答えは、産駒たちに託される。
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