タラに帰ろう
'09新種牡馬外伝 - *ロイヤルウエスト
いくらFlameという単語に「恋人」という意味があるからといって、Flame of Taraを「鱈(タラ)の恋人」と訳すわけにはいくまい。タラの丘(The Hill of Tara)は、いにしえの時代からアイルランドにおいて政治的あるいは宗教的に重要な役割を担っていたと言われる聖地なのである。
Flame of Tara自身もプリティポリーSやコロネーションS(いずれも当時G2)を勝つなどした強豪だったが、彼女をさらに有名にしたのは繁殖牝馬としてのポテンシャルである。1987年産のSalsabil(父Sadler's Wells)は英1000ギニーとオークスの2冠を制し、さらに愛ダービーも牡馬相手に勝利。この他にもマルセル・ブサック賞やヴェルメイユ賞などG1を勝ちまくった歴史的名牝だ。
Salsabilを含めて13頭の産駒のうち12頭が勝ちあがっていて、88年産のMarjuはセントジェームスパレスS(G1)の勝ち馬で、引退後は種牡馬入り。Flame Of AthensやDanse Royaleも重賞を勝っているという質の高さである。
Danse Royaleはプシケ賞(仏G3)を勝ったCaerleon牝馬で、98年にGone Westとの間に生まれた牡駒は日本に輸入されて競走生活を送った。その*ロイヤルウエストが凡庸なる成績にも関らず種牡馬となったのは、多分にこうした名馬を輩出する血統背景に依拠するものと言えるだろう。
Gone Westはミスプロ系の中では芝適正が高い種牡馬で、直仔は本邦においても*ザフォリアや*スイートオーキッドなどが活躍している。大物感という意味では一歩足りないキャラで、高いアベレージで勝負するタイプになっている。
*ロイヤルウエストはGone West×Caerleon×*アーテイアスという累代で、日本にも馴染みのある名が連なっている。種付け数から言って派手な活躍を期待するのは酷というものだが、配合次第では自身の成績を越えるような産駒を送りだすだけの潜在力はあるのとは思う。
名作「風と共に去りぬ」はヒロインのスカーレット・オハラが自身のルーツである”タラに帰ろう”と意を決して幕を閉じるが、その名もまたThe Hill of Taraに由来するものらしい。ダイワスカーレットに*チチカステナンゴじゃなく*ロイヤルウエストを付けたら、その仔に何て命名しようかとなんて妄想るのも、素人ならではの楽しみ。
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