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北関東のからっ風

'09新種牡馬外伝 - サンエムキング

1994年はある意味において日本競馬のエポックとなった。
アメリカでG1を3勝した名馬にして、後に空前絶後のスーパーサイアーとなる1頭の青鹿毛馬。言うまでもない、*サンデーサイレンスの産駒たちがデビューし、ターフを席捲し始めたのがその年である。

サンエムキングは実に、そのサンデーの初年度産駒と同期にあたる。サンデーが大レースを勝ちまくり、BMSとしても猛威を振るい、海外にも血を広げ、孫までもが種牡馬入りしている間に、サンエムキングは中央で79戦、地方77戦という途方もないキャリアを積み上げてきた。

サンエムキングはまた、高崎競馬場の終焉も見届けた。約80年にわたって開催されてきた高崎競馬は地方競馬淘汰の波の中、2004年末を持って閉鎖されたが、高崎に所属していたサンエムキングはその最後の12月開催にも出走している。

サンデーの仔や孫たちと共に走り、”物語装置”としての競馬が機能していた最後の時代(90年代)から世紀末を跨いで出走を続け、地方競馬の悲哀を味わった彼は、その年月に何を感じ何を見てきたのだろうか。

種牡馬入りしたものの、1頭も産駒を残せず07年夏に他界した彼に、もうその問いはかけられない。

サンエムキングがキャリア後半を過ごした北関東は、高崎だけでなく宇都宮、足利と相次いで閉鎖されて競馬の灯が消えてしまった。自分は基本的にJRAが主戦場でさほど地方競馬場には行かなかったが、そんな中でものんびりしていてちょっと無愛想で、でも憎めない北関東3場の雰囲気は好きだった。サンエムキングが走っていたころ、もっと足を運べば良かったと悔いている。

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