南関プリンセス
南関東牝馬クラシック第2弾、大井の東京プリンセス賞はネフェルメモリーが制した。
ネフェルメモリーは北海道から転厩してから2歳優駿牝馬→桜花賞と連勝し、本命としてこのレースに臨んでいたところだ。チャームアスリープ以来の3冠も期待できる強さである。
この牝馬のボトムラインを見て、ある種の感慨を覚えるのは長年の南関東ファンだろう。
母のケイアイメモリーはJRA1戦0勝の無名馬だが、祖母のカシワズプリンセスは3歳優駿牝馬を勝ち、牡馬を相手に羽田杯や黒潮杯をも制した女傑。さらに3歳母のシャドウも南関で桜花賞、オークス、キヨフジ記念などを勝った活躍馬である。
ネフェルメモリーは北海道生まれだが、この牝系はそもそも青森県で供用されていた輸入牝馬*インザシャドウズを基点としている。同馬は安田記念を2着し種牡馬となったカネオオエを産んだ優秀な繁殖だ。
ところでこの*インザシャドウズ、繁殖成績を調べると不思議な事実が浮かんでくる。カネオオエの1年前には全姉となる*バーバー産駒レッドシャドウを産んでいるのだが、実は同じ70年にもう1頭、ニューシャドウという牝馬も産んだことになっているのだ。
最初はデータベースのミスかとも思ったが、真相はそうではない。
双子なのだ。
発育に問題が生じるリスクも大きいため、競走馬の双子は受胎の段階で片方が淘汰されるのが一般的なのは周知の通りだ。長年、シャドウ系を育んできた青森県の山内牧場はこのときの経緯をこう綴っている。
「先代の社長は冒険心が旺盛だったため、実際に双子を一回産ませたことがあります」
「産まれた2頭はニューシャドウとレッドシャドウと名づけられました。ニューシャドウは母のもと、レッドシャドウは乳母のもとで育てられ、ニューシャドウは岩手競馬、レッドシャドウは川崎に入厩しました」
2頭とも競走馬としては大成できなかったが、ニューシャドウは戸塚記念を勝ったサガミトキマサを産んだ。片やレッドシャドウはかのシャドウの母となり、南関東に脈々と流れる名牝の源泉となった。
当時、双子の生産は向う見ずだと揶揄されたかもしれない。
しかし40年の時を経て、それは美しい思い出(=ネフェルメモリー)となったのである。
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コメント
何か自分のところのこと書いていただくのは嬉しくもあり、恥ずかしくもありますね(汗)
でもシャドウのボトムラインが活躍馬を出してくれるのは正直嬉しく思います。南関女傑の系譜をネフェルメモリーが継いでくれて…頑張ってくれてまだまだ先へつなげて欲しいと思います。
シャドウのボトムラインが、残念ながら今うちにはいないのですが、これから何とかウチでも持って来たいと個人的に考えています。やはりウチにとってはかけがえない宝ですから。また、それに加え、私は私で父の出したシャドウを越える自分の代表馬を出したいとも思っています。
投稿: 山 | 2009年5月15日 (金) 02時32分