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あぢさゐとサマンサ

あぢさゐの花のよひらにもる月を影もさながら折る身ともがな
~源俊頼『散木奇歌集』より

土壌や咲く時期によってその花の色が移り変わったり、花と思われている部分は実は装飾花だったり。古から梅雨の季節の風物詩として親しまれているわりに、紫陽花は意外と不思議な植物である。

紫陽花の咲く季節に行われるエプソムカップ。ビッグレースの谷間のG3、1800という距離、開催後期の荒れた馬場・・そんなハンパな条件が、実は案外好きだったりする。

マーベラスサンデーやエイシンデピュティといったG1馬を産んでいるとはいえ、基本的には名脇役たちの渋いレースがエプソムカップの楽しみだ。自分にとって印象深い1頭に90年の勝ち馬サマンサトウショウがいる。

サマンサはキャリアの大半を角田騎手とコンビを組み、一生懸命に追い込んでくる姿がなぜか応援したくなる牝馬だった。前走準オープンを勝ちあがった勢いで挑戦したエプソムカップでも、4コーナー9番手から差し切って見事に重賞勝ち。その後休養を挟んだマイルCSも最後方から追い上げて3着に入っている。

サマンサトウショウは父トウショウボーイにBMS*ノーリュートというトウショウ牧場ならではのオーナーブリードホース。母系はサマンサの祖母チャイナトウショウからトウショウの名が付いていて、さらに遡ってみると*セヴァインという輸入牝馬に行き着く牝系だ。

*セヴァインはいわゆる小岩井や御料牧場系ではなく、青森の東北牧場がアメリカから導入した牝馬のようだ。ドウカンヤシマが出た程度の地味な牝系だったが、セントライト→*ダイハード→*チャイナロック→*ダンディルートと時々の一流種牡馬を配されて潜在された力が、サマンサで花開いた。

さらにサマンサトウショウの娘タバサトウショウは後年、名牝スイープトウショウを産むことになる。スイープが牡馬を蹴散らした宝塚記念もまた、紫陽花の季節であった。

品種改良された輸入花に比べれば決して派手ではない紫陽花。冒頭の歌でも月光の美しさを表現するための配役として登場しているが、しかし見方を変えれば、日本の土壌と生活の中に根付いた紫陽花だからこそ、そうした役回りでも存在感を保てるのであろう。

在来牝系を紫陽花になぞらえるのもいささか安易だが、春には桜が咲き誇り、今は淡いブルーの紫陽花の回廊となっている散歩道を歩きながら、思い返されたサマンサなのだった。

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