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夏の読書感想文

「バカの壁」や「頭がいい人、悪い人の話し方」などが好例となったように最近の新書はまず求心力とインパクトのあるタイトルが必要不可欠になっている。多くの出版物の中で読者を惹くための手法ではあるのだが、反作用として「タイトルに釣られて買ったけど、中身がね」というパターンも出てきやすい。

『日本人はなぜシュートを打たないのか』(湯浅健二著・アスキー新書)も、自分としてはそのギャップが気になってしまった1冊だ。

中身が全くつまらないわけではない。料理に例えれば、素材はいいもの使っているのに味付けと盛り付けがちょっと変だよね、といった感じなのだ。

大体において新書のテーマはワンセンテンスで表現できるし、そのくらいコンパクトな方がいい。その点、著者の主張のコアは明確だ。

サッカーは心理ゲームである。

この出発点から様々な事例が引かれていくのが本書の構成である。

あとはワンセンテンスの主題をいかにバリエーションを付け、美味しそうに仕上げて提供するのかが勝負。とすれば、本著は残念ながらそれに失敗していると思う。

引用されることが多いドイツ留学時代の話がやや一本調子だし、また独特の言い回し(クリエイティブな無駄走り、有機的なプレー連鎖の集合体・・)の味がくどくて、食べ飽きてしまうのだ。筆者独特の文章スタイルなのだろうが・・

そして様々な小節に話が展開するのものの、拡散したままの不安定さが否定できない。例えば、日本は欧州と比べて社会的に共有されている安定性や確実性のイメージが高く、リスクを冒す(=シュートを打つ)ことを回避しやすいという推論が示されている。そこから「問題解決の糸口は何か」という具体論に収斂していけば収まりもよいところに、それがない。

どこかの書評でも指摘されてとおり編集サイドの問題も大きいような気がするが。いずれにせよ「で、結局はシュートを打たない日本人はどうすればいいわけ?」という疑問符と消化不良感とが読後に残ってしまうわけである。

とはいえ、サッカー論としてあるいは日本人論として面白いなと思わせる部分も随所にある。自分は学生時代の研究テーマにしようと思ったくらいでもともとスポーツにおけるメンタルの働きに非常に興味があり、本書を参考に心理スポーツとしてサッカーの試合を観てみると、試合全体の流れやダイナミズムが見えて来たりして興味深かったのも事実だ。

同じ主題を、別のカタチで表現できれば、非常に面白いものが出来そうな気がする。

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