« 身と蓋がない | トップページ | 四番手の逆襲 »

ベストセラーなんて

前回エントリの終わりに出てきた”二つの月”の小説は、もちろん村上春樹の1Q84。実を言うと食わず嫌いというか、ベストセラーブンガクなんて・・的ひねくれ精神のせいで村上春樹は避けていたところがあり、デビュー作の『風の歌を聴け』と今回の『1Q84』しか読んだ事がない。しかもざっと。

だから書評なんて大層なモノを書けるわけないのだが、簡単に感想を。

自分が触れた範囲で春樹小説から感じるキーワードは「死」「メタノベル」「象徴の多義性」である。

主要な登場人物は常に<死=喪失>という観念を纏っていて、喪失によって生じた空白をどう扱っていくのか、というのがテーマになっている。それを直接的に言及せず周回するように語られていくのがハルキ節なわけだが、まあその平易であるが時に装飾かかった文体が好き嫌いの分かれるところの点でもあろう。

また風もQもストーリー中に小説が登場する。別にメタノベルそのものが珍しいわけではないものの、小説という道具を用いて小説を構成するという営為はむろん意図的なわけで、そこにこの作家が小説に対して「信じているものの大きさ」を感じたりもした。

最大の特色は言うまでもなく、全編に満ちた「暗示と示唆と象徴」~例えばQでいうところのリトル・ピープルとはナンなのか~である。ちょっとググってみたら様々な解釈や解説に出会えるが・・正直言うとまだよくわからない。
ただ、意味するもの(シニフィアン)と意味されるもの(シニフィエ)が単純な関係にはなく、複数の解釈が在り得たり、時にはシニフィアンとシニフィエが逆転すらしているような複雑な位相がハルキ小説の特徴ではあるかなと。

もう一度、ちゃんと読んでみようかとは思った。ほうほう。

|

« 身と蓋がない | トップページ | 四番手の逆襲 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ベストセラーなんて:

« 身と蓋がない | トップページ | 四番手の逆襲 »