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スピードの香り

不良馬場となった福島の新馬戦を勝ち上がったベイビーイッツユー。
その小気味の良い先行力は、いかにもダイワメジャーらしくもあり、あるいはいかにもこの母系らしいとも言えるだろう。

ベイビーイッツユーは母チリエージェ、祖母メガミゲランの代から、白井牧場がヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン(HBU)に提供してきた一族になる。

92年生まれのメガミゲランはかの*サンデーサイレンス初年度産駒と同期で、クラシックには縁がなかったものの、97年の北九州短距離Sなど7勝をあげたスピード馬である。メガミゲランが関西で活躍していたちょうどその頃、HBUで一口馬主デビューをしたはいいが勝ち星が遠かった自分は、随分と羨みながら彼女の走りを見ていた記憶がある。そしてその娘チリエージェもまた、1400m以下で5勝したスプリンターだった。

この母系を遡ると、52年生まれのニュージーランド産馬*ミズブゼンの名にあたる。馬名からわかるように上田清次郎の持ち馬であった同馬は、現役時に京都牝馬特別などを勝つ活躍をみせた。
そしてミスブゼンの6番仔になるゲランは、繁殖として広く枝を広げ、現在にその血を伝えている。
直仔に78年最優秀牝馬となったシルクスキー。孫の代にはオースミシャダイ(阪神大賞典)やコスモドリーム(オークス)、ひ孫に阪神3歳Sの覇者ラッキーゲラン。80年代から90年代にかけての懐かしい活躍馬の名が並んでいるボトムラインである。

81年に白井牧場で生まれたゲランの仔ミスゲランは白井フサ氏(白井透・民平兄弟の母)が所有。以降はずっと牧場ゆかりの牝系として現在まで続いていて、同時にHBUにとっても一つの看板血統になっている。

ところでゲランという馬名の由来は定かでないが、*ミスブゼンの母Imperial Goldがナポレオン皇后に献呈されたという香水「オー・デ・コロン・イムペリアル」 (Eau de Cologne Imperiale)とシンクロしていることからも、やはり香水メーカーのゲラン(Guerlain)と推察するのが最も自然といえようか。

短距離で活躍したメガミゲランにサクラバクシンオーを付けてチリエージェ、そしてダイワメジャーを配してのベイビーイッツユーというのは、ある意味ケレン味のない累代でもある。父母から受け継いたスピードに乗せて、ゲランの香りを振りまいていく役割は、他でもない「君にぴったり」だ。

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