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落ちてきたフォアグラ

ディープブリランテのダービー制覇はある点で感慨深いものがあった。馬主はサンデーレーシングではあったけれど、同馬はハリー・スウィニー(Harry Sweeney)率いるパカパカファームの生産。スウィニー氏はかつて大樹ファームでその腕を振るった人物である。

大樹ファームから待兼牧場へと移り、その後北海道で生産を始めたという経歴は、広く知られるようにはなった。しかし数ヶ月の滞在の予定で来日したアイルランド人獣医が、ここまで日本に根を下ろすまでに突き当たった壁は、我々が想像するよりもずっと高く困難なそれであっただろう。

待兼牧場を辞しピンフッキングから始めた彼が、自らの牧場を持とうとしたときもそうだった。農地を手に入れる歳の苦労について、かつてこう述べている。

「日本で(外国人が)農地を取得するのは、核燃料やミサイル技術を開発するようなもの。つまり農地所有というのは、かの国にとってそれほど重要なことなのです」

幾つもの壁を乗り越え、パカパカファームという「誰もが忘れられない名前の」牧場を開き、馬主資格も取得した彼はしかし、単なる熱血漢ではなく、冷静な視点を失わないリアリストである。

本邦で活躍した馬の兄弟や近親馬が多い繁殖牝馬群、またそこに配された種牡馬からは、マーケットの需要を何よりも重視している姿勢が見える。

今般のセレクトセールでも1歳・当歳の両市場に複数の幼駒を上場。中でもMastercraftsmanの半弟(父Sea the Stars)は金子真人氏が、ダービー馬の全妹ラヴアンドバブルズ12はオーストラリア人のPaul Fudge氏が落札してニュースとなった。

多くのメディアが高額落札馬の値段を取り上げてセールの活況ぶりばかりを報じる中、自らの成功を喜びつつもスウィニー氏はやはり冷静である。セール後に受けたTDNのインタビューを彼はこう締めくくった。

「私たち日高の生産者は、社台グループという名のテーブルから落ちてくる”おこぼれ”なしではやっていけない事実を受け止めないといけません。今日はフォアグラ乗せトーストが落ちてきて、たまたまそのフォアグラが我々の方に向いていたということですよ」

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