Mrs. Pennyに憧れて
本邦におけるNorthern Dancer直仔といえば当然*ノーザンテーストということになり、その貢献度合には見解が分かれるとしても、同馬が社台ファーム隆盛の礎となった点を否定する意見は少ないだろう。
一方で良血のNorthern Dancerラストクロップが、吉田善哉氏の服色で走ったことはあまり知られていない。
アメリカで生まれ欧州で走ったMrs. Pennyは、80年代前半を代表する名牝と言ってよい。2歳時にチェヴァリーパークS(英G1)を勝ち、3歳時には英愛のギニーこそ取りこぼしたが、ディアヌ賞やヴェルメイユ賞(いずれも仏G1)を制した。キングジョージでも古牡馬のEla-Mana-Mouにただ一頭喰い下がって2着に大健闘し、英愛3歳牝馬チャンピオンに選ばれている。
Mrs. Pennyは繁殖入りした後、牝馬の出産が続き、88年に生まれた4番仔(父Northern Dancer)が初めての牡馬となった。生産したのはOverbrook Farmである。70年~80年代の世界の生産界を席巻したNorthern Dancerは前年の87年に種牡馬を引退していて、結果としてその幼駒はセリに上場された最後のNorthern Dancer産駒になった。
注目を集めた良血馬を280万ドル(1$=140円換算で約3億9千万円)という価格で落札したのが、ほかならぬ社台ファームの吉田善哉氏だ。
Northern Parkと名付けられた牡馬はフランスで走り30戦4勝、D’Hedouville賞(G3)2着がある程度に終わり、集めた期待の大きさを考えれば期待はずれと言わざるを得ない。大きなタイトルを取れば日本に種牡馬として持ってくることも考えていたのかもしれないが・・善哉氏のその望みは叶わなかったとしても、この牝系は後年、吉田家の庭に別の形での実を結ぶことになる。
Northern Parkの一つ下の妹Penny’s Valentine(父Storm Cat)はイタリア1000ギニーで3着という成績を残している。
このPenny’s Valentineの3番仔の牝馬は*チャールストンハーバー(父Grindstone)と名付けられ、アメリカで6勝を上げた。引退後、Mr Greelyを受胎した同馬を購入したのが、ノーザンファームの吉田勝己氏である。
*チャールストンハーバーは来日後、ダイワメジャーとの間に快速馬を産んだ。カレンブラックヒルはだから、Storm CatやGrindstoneら多くの名馬を世に送り出し2009年に幕を下ろした名門Overbrook Farmの遺産と、吉田家がMrs Pennyに抱いた希望との、絶妙な結実でもあった。
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