勝負師の色気
アンカツこと安藤勝己騎手が、1月末をもって騎手免許を返上し、引退することが発表された。
ここ数年は騎乗数を減らしていたから予測はしていたことだが、これでお気に入りの騎手がまたひとりいなくなる寂しさは残る。
もちろんオグリキャップのパートナーとして笠松の名手の名は知っていたけれど、ライデンリーダーとのコンビでJRA勢を撫で斬りにしたときは、ものすごい衝撃を受けた。その後JRAの移籍して幾多の名勝負を演じたのは周知のとおりだが、全盛時の武豊が見せたしなやかな騎乗とも、後に活躍するペリエやスミヨン、ルメールら外国人騎手とも質を異にする、勝負師の色気を感じるのがアンカツだった。普段は飄々と、あるいは泰然としていながらも、騎乗では安全策を是とせず変幻自在。稀有な乗り手だった。
先のライデンリーダー始め、ブエナビスタやマルセリーナ、ダノンシャンティなど鮮やかな差しきりも印象深いが、個人的には先行して「肉を切らせながら骨を断つ」騎乗こそが、アンカツの魅力だったと思っている。ダスカ&ダイワメジャーもそうだし、ベストレースを選ぶとしたらザッツザプレンティの菊花賞だろうか。二冠馬ネオユニヴァースを相手に、ここしか無いというポイントでのロングスパートで押し切った騎乗は、あたかも真剣を構えて相手との間合いを測り、勝負どころで一気に踏み込むと間一髪で斬り勝ったような、そんな凄みを感じたものだった。
英語のツイートでHistory-Makerという形容があったように、地方騎手がJRAへ移籍する際のルールを変えるきっかけとなるなど、まさに時代を切り拓いてきた。今後の進路はまだ明らかにされていないが、まずはお疲れ様と。
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