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奪い去られ積み重ねる

何年ぶりになるのか。アイリッシュダンス&ハーツクライ親子をこよなく愛したミカと、久しぶりにダービーの日に会えた。

ダービースタリオンズSがあるならダービー2着馬の産駒だけのレースも作ってくれよと、好天の下で少し話せば長い空白があっという間に埋まるのも、同じ空間で同じ競馬を見た日々の濃さ、故だろう。

今年もメモリアルスタンド前の芝生の最前列で観戦ができた。開門と同時に場所を確保してくれたのは、かつてレディブロンドを一緒に持っていた20年来の競馬友達のTだった。

須貝調教師が騎手時代とは別人のような立派な体格になっているのを笑うTだが、初めて会った頃はヒョロっとしていたのに今では腹が出ているのだから、人のコトは言えない。ダービーが20数回の歴史を重ねる間には、皆平等に時間が流れている。

毎年、ダービー観戦時にお手製の豪華なお弁当を持ってきてくれたTの連れは、発熱して今日は欠席だった。循環器にも病気を抱える彼女は、今日はどの馬を応援しているのだろうか。

レディブロンドの想い出話をしていたら、朝が早かったTが居眠りを始めたので、スタンドに向かった。

フジビュースタンド3階に上がるエスカレーターで、ブロンドの仔ゴルトブリッツに出資していた一口仲間と会った。彼はダービー有力馬エピファネイアの出資者でもある。重賞に出走すること自体が貴重であるが、それがG1であり、クラシックであり、さらにダービーともなればそれは言葉に替えがたい経験なのは間違いない。いつもどおりの表情に見えた彼の、しかし凪ではあるはずがない心を羨ましく眺める。付いて行くと、スタンド席に競馬クラスタたちの顔が見えた。今の自分を競馬に繋ぎ止めているのは、彼らの存在が小さくない。

芝生に戻ると、これまた場所確保に走ってくれたS君が戻っていた。彼が不幸なアクシデントで身内を亡くしてから3年が経つ。日々の営みが奪い去ってゆくものと、積み重ねてゆくものとが、今の彼の表情をつくっている。競馬場で一緒にいるときには、だから余計なことを考えずに一緒に楽しむことにしている。タキオン派のS君はペプチドアマゾンの複勝に突っ込んでいた。

そして第80回の日本ダービーが終わった。

いいレースだった。 昔はアンチだった自分も、様々な経験の果てにウイニングランをしている武豊に、素直に拍手ができるようになっていた。

キズナなんて”いかにも”な馬名の馬が頂点に立つのも、ちょっと面映いとは思いつつ、それはそれでいいかと思えた。

そしてユタカコールを聞きながら、エピファネイアを持っている仲間の心中に思いを馳せ、息を大きく吐いて目をつむった。こういうときの形式通りの慰めの言葉というものはあまりにも無力であり、無粋である。

馬券や新聞が旋風に巻き上げられる中、陽が傾き、少しばかり色を変え始めた空を見上げて、駅へと向かった。今日出会った人たちのことを想いながら。

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