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雨中に再会

昨年9月のことだ。

温帯低気圧がもたらした激しい雨の最中だったから、門別のダーレージャパン・スタリオンコンプレックスに見学に訪れていたのは、自分たちの他に大きなレンズを抱えた女性だけだった。

指定の時間になると若い男性スタッフが現れ、カッパを着込んだ私達を厩舎へと導いてくれた。

厩舎に入ってすぐ右手にいたのが、*ストリートセンスだった。実はBCジュヴェナイルとKYダービーを初めて制したこの名馬が私の目当てだったのだが、訪問の2週間ほど前に”来年は北米で種付をする”とアナウンスされ、ダーレー・ジャパンのHPからもその名前が消えていたので、間に合わなかったかと諦めていたのだ。

「アメリカのダーレーがフライングで発表しちゃったんですよ」とスタッフが苦笑する。「来週くらいにはアメリカに出発するらしいですよ」

なんという幸運だろう、しばし馬房で大人しく佇む*ストリートセンスに見惚れた。それから三白眼で睨んでくる*パイロや、おっとりしているディープスカイ、アドマイヤムーンと素晴らしいメンツを見学する。

*ストリートセンスの代わりに何が来るか決まっているのかと尋ねると、まだ分からないという。「でも向こう(海外)のダーレーも、日本の競馬はちょっと違うって気づいたみたい」だそうだ。

ちなみに後日、*ハードスパンと*モンテロッソが新しいロースターに名を連ねている。

他に見学者がいないせいか、若いスタッフは物好きな私の質問にも丁寧に答えてくれた。*キングズベストの種付相手、アドマイヤムーン産駒への期待、*ストーミングホームの配合・・・・

1時間の贅沢な時間を過ごし、お礼を述べて車に帰ろうとしたとき、「もう1頭みませんか?」と別の小さな厩舎に誘われた。

何だろうと疑問を抱えつつ小ぶりな厩舎に入ると、1頭の栗毛の馬が顔を覗かせていた。

「これね、アテ馬なんです。シンコウウインディ」

「ええっ!」

私の同行者がのけぞった。ウインディが好きで、美浦まで会いに行ったことがある彼も、こんなところで再開できるとは考えもしなかっただろう。

「ウインディね、優秀なんです。どんな激しい気性の牝馬に蹴られてもめげない(笑)」

珍客の訪問に、シンコウウインディはやや興奮気味だ。

「ウチの種牡馬はみんな、こいつのおかげで安心して種付けできてるんです。こいつも歳だけど、後を継げるアテ馬がいなくて困ってるんですよ」

同行者は写真を取るのも忘れ、「うわー」「ふええ」と感嘆符ばかり口にしている。驟雨の中での思いがけない再会だった。

シンコウウインディ。父*デュラブ×母ローズコマンダー。17年前の2月16日、G1に昇格して初めて施行されたフェブラリーステークスの勝ち馬。競り合う相手に噛み付きに行ったクセ馬。そしてダーレーに絶賛される素晴らしいアテ馬。

こんな”居場所”もいいんじゃないかな。

そして今年もフェブラリーステークスの季節、である。

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