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お礼と戸惑いと責任と自覚

サラブレのムック本「サラBLOOD vol.3」に、『受け継がれた名前/Minoru物語』を掲載していただいた。かつてこのブログに連載したエントリを加筆修正したものだ。
それ以外にも盛りだくさんの内容になっているようなので、興味のある方は、ぜひ手にとって立ち読みして購入していただければと思う。

さて、寄稿に関連してちょっと感じたことなどを。

まず、拙文を評価していただいたことは率直に言って光栄だった。競馬にまつわる文章を書くことが純粋に好きで仕方なかった若い頃の自分が、これを知ったらさぞ喜ぶことだろうと思う。声をかけてくださったサラブレ編集部のK氏にはお礼を申し上げたい。本当にありがとうございます。

その一方で、感じた違和感みたいなものもある。

今回ブログエントリの再掲というカタチで話が進んだ中で、記事の中身について「こうしてほしい」「これはオカシイ」というような要望や指摘は編集の方から一切なかったのは、意外というか肩透かしだった。
自分としては、内容の吟味はもちろん、よい文章にするために表現をブラッシュアップをしていくプロセスが「編集」だと思っていたし、ブログや同人誌と対比したとき、商業誌のアイデンティティはそこにある(誤解を恐れずにいえば、そこにしかない)と思っていたからだ。

素人がネットの情報だけを頼りに書いたひとりよがりの文章を、そのまま商業誌に載せてしまってよいのだろうか?

この迷いは最後までつきまとったままだった。本音を言えばだから、今回もプロの編集者の目から指摘していただきたかったとは思っている。厳密な考証とまでは言わずとも、他者の目で推敲してもらえれば、さらに良い文章が紡げたのでは、という感覚が残ったのが正直なところだ。

雑誌づくりの現場に身を置いたことがあるわけではないので、私の言うことはただの素人の浅知恵なのかもしれないが。

また書き手の登用という点に関して言えば、最近はネット上で個人として興味深い発信をしていたファンが、気づいたら(サラブレに限らず)競馬メディアで文章を書いているという事例も散見する。ライターの発掘ルートとしてこれが悪いと言うつもりは全くないが、ただしその場合、造詣の深さや発想の豊かさと、文章力とは、全く別のスキルであることには留意しなければならない。

編集者が面白いと感じて「書いてみない?」と声をかければ、そこに飛びつく競馬ファンは少なくないだろうし、自由な感性で自由に書かせた文章は確かに新鮮な印象は残すかもしれない。しかし鮮度が落ちてきたらサヨウナラでは、ただの使い捨てじゃないかという批判は免れないと思う。

私のようなおっさんは別にして、これからメディアを通じて競馬に携わっていきたい、モノ書きとして身を立てていきたい、そんな希望を持っている若い人間を抜擢するのであれば、「お金を払ってでも読んでいただけるレベルの表現力・文章力」が身につくようサポートし育てる努力をしていくのが、編集サイドの責任のひとつなのではないか、と私は感じている。そして書き手もその自覚を持つ必要がある。

そうしないと、競馬で最も大切な語り部、ストーリーテラーのクオリティは保てていけないだろう。

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