追加の8牝系(その1)
昨秋発売された『覚えておきたい日本の牝系100(平出貴昭著)』は枕元に置いて気の赴くままページを繰っている。そこそこ競馬歴の長いファンの琴線に触れつつもマニアックに走り過ぎず読みやすい。この種の競馬本では出色の出来ではないだろうか。著者に膨大な知識と、深い造詣とがあって初めて出せる味かと思う。
恐らく著者は100に絞る過程で「これは入れるか外すか」と迷った牝系もいくつかあるはずだが、今回は自分の趣味で<追加の8牝系>をセレクトしてみた。
本家100と合わせて、覚えておきたい煩悩の牝系108。
8つのうち、まずは2つ。
【Fleet Victress】
72年生まれのFreet Victressは芝G2勝ち馬。Minstress~Hum AlongからはBCジュヴェナイルフィリーズを勝ったStorm Songや、種牡馬となったHigh Cottonなどが出て枝を広げた。Storm Songの仔*ストリベリーフェアはダーレー・ジャパンで供用され、タニノギムレットとの間にオークスで1番人気に推されたミッドサマーフェアを産んでいる(オークスでは単勝勝負で撃沈・・)。Storm Songの全弟*ストームファングは広尾TCで7,800万円で募集されたが、藤澤和雄厩舎の良血マル外にありがちな成績で引退、青森で種牡馬となった。
ヤナガワ牧場が輸入した*アリーウィンの流れからは、毎日王冠などG2を3勝したサンライズペガサスが出た。またウェディングブーケ~ニホンピロローズを経由してドクターコパと出会い、コパノリッキーがフェブラリーSやJCBクラシックを勝つ輝きを見せている。長距離重賞の常連サイモントルナーレも同じ牝系で、*アリーウィンの末裔は個性派が多い印象。
*スプリングレインもダーレーが輸入していて、このあたりまだ活躍馬が出そう。
Freet Victressはもとは19世紀末からアメリカに根付いた牝系で、遡ればハットトリックやファインチョイスあたりも同族の出になる。
Fleet Victress 1972(シープシェードベイH)
|Minstress
||Hum Along
|||Storm Song(BCジュヴェナイルF)
||||*スプリングレイン
|||||ヴァンガード
||||*ストロベリーフェア
|||||ミッドサマーフェア(フローラS)
|||Happy Tune
||||High Cotton(種牡馬)
|||*ストームファング(種牡馬)
|||Diamond Omi(オークリーフS)
|*アリーウィン
||ユーモレスク
|||サイモントルナーレ
||ヒガシブライアン
|||サンライズペガサス(毎日王冠、大阪杯等)
||ウェディングブーケ
|||ニホンピロローズ
||||コパノニキータ
|||||コパノリッキー(フェブラリーS、JBCクラシック)
||ウェディングケーキ(京王杯AH3着)
【*ノーベンバーローズ】
Caro産駒の*ノーベンバーローズは自身は1勝馬に過ぎなかったが、社台ファームに輸入されて多くの活躍馬を出す牝祖となった。
*ノーザンテーストの産駒エリザベスローズは、アネモネSで権利を得て桜花賞にも参戦した(14着)。主にマイル以下で活躍し、セントウルSを勝って引退している。繁殖入りしてからは*サンデーサイレンスとの間に重賞馬を連発した。馬主vs調教師のあおりで転厩→アメリカのN.ドライスデール厩舎に移籍→当地で種牡馬入りという数奇な運命を辿ったフサイチゼノン、スプリングSまで4連勝したアグネスゴールド(この馬もアメリカ→ブラジルで種牡馬生活を送っている)、ダート短距離の重賞を勝ちまくったリミットレスビッド。
その仔バースデイローズからは東スポ杯2歳Sで2着し種牡馬となったトーセンファントムも出ている。
エリザベスローズの全妹クリスマスローズはデビューから3連勝した素質馬だったが、故障がちで大成できなかった。孫に戸塚記念などを勝ったナターレがいる。
もう少し遡ると、トーホウジャッカルや*エーシンフォワード、Fappiano、*オジジアンなんかも同じ牝系。このあたりはしっかりG1を勝ち切っているのに、この牝系で括ると、惜しいところまで行きつつ未だ頂点に手が届いていない。ロゼカラーやローズバドなどのもう一つの”バラ一族”にG1勝利の先をこされてしまった。
*ノーベンバーローズ牝系は残っている繁殖があまり多くなく、広がりという点では今ひとつだが、角田厩舎の牝馬で悲願達成を見てみたいという願いを込めてセレクトした。
ノーベンバーローズ 1982
|エリザベスローズ
||バースデイローズ
|||トーセンファントム(種牡馬)
||フサイチゼノン(弥生賞・種牡馬)
||アグネスゴールド(スプリングS・種牡馬)
||リミットレスビッド(東京杯など重賞8勝・種牡馬)
||パルジファル
|クリスマスローズ
||ロージーチャーム
|||ナターレ(戸塚記念)
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コメント
ご愛読ありがとうございます!
これ以上無いくらいのお褒めのお言葉で、非常に嬉しいです。
確かに、牝系の取捨は非常に迷いました。
200以上リスト化しましたので、上記2つは当然リストに入っています。
Fleet Victressは、もう少し近いところにもっと重賞勝ち馬がほしかったです。
ノーベンバーローズは、ほぼエリザベスローズの仔で、G1は勝っていないのがネックでした。ただ、この牝系はもう少し広げて「世界の~」ができればやりたいです。
残りの6牝系をどのように選ばれるか楽しみにしております。
投稿: 平出貴昭 | 2015年2月 3日 (火) 14時13分