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試食コーナー

前回アナウンスしたとおり「競走馬擬料理化本 皿ブレッド」にコラム的なものを書かせて頂きました。名馬電機社長さんの許可をいただいて、そのうちの一編サダムパテックを、こんな感じだよということで以下に掲載します。本誌にはデュラハン、サイレンススズカ、サクラローレルなど、90年代以降のバラエティ豊かな10頭が「料理されて」いるので、よろしければお召し上がりください。

暮れの朝日杯FSで1番人気に推されたのはサダムパテックだった。前走の東京スポーツ杯2歳Sを差しきった内容が秀逸で、鞍上も名手クリストフ・スミヨン。ここを勝利し、翌年のクラシックに主役で向かうというのが陣営の描いた未来図だ。やや出負けしたパテックは外目を追走し、徐々に位置取りをあげて直線に入る。満を持して先頭に立とうとしたその時、さらに外から伸びてきたのはグランプリボスとミルコ・デムーロ。5番人気の伏兵が勝利をもぎ取り、パテックは0.2秒差の4着に終わって2歳王者の称号を逃した。

明けて3歳となったパテックは弥生賞に出走し、見事に前哨戦を勝利する。そして東日本大震災の影響により府中開催となった第71回皐月賞に、堂々の1番人気で出走した。しかしこの皐月賞は、パテックの栄光ではなく、後に世界に名を轟かすオルフェーヴルが、その秘めた能力を詳らかにしたレースとしてファンの記憶に刻まれることになる。3馬身差の2着に完敗したパテックは、以後のクラシック路線において「黄金の三冠馬」のバイプレイヤーに甘んじた。

マイル~中距離路線に矛先を向けた翌年は、5月の京王杯スプリングCで久々の重賞制覇。しかし次走の安田記念では、またしても1番人気に応えられず9着に沈んだ。秋の緒戦となる天皇賞でも8着に終わったことで、”結局はG2までの馬”という烙印がパテックに押されていた。

しかしこのレースで初コンビを組んだ武豊は手応えを感じていた。能力の高さとともに、京都マイル戦への適性を陣営に伝え、マイルCSでの騎乗を志願したという。

そして迎えたマイルCS。最内枠からスタートした4番人気のパテックは中団インの絶好位を追走し、直線では僅かなスペースを突いて一気に抜け出す。最後は後続に詰め寄られはしたが、クビ差で振り切ってついにG1初戴冠を成したのだった。好リードの武豊にとっても、21度目の騎乗でようやく掴んだマイルCSの勝利である。

2着に破ったのは1番人気のグランプリボス。2年前の雪辱を、今度は逆の立場で果たすことになった。ちなみにサダムパテックとグランプリボスとは生涯で10度対戦し、後先で5勝5敗と互角の成績を残している。共に闘い、共に引退を迎えたよきライバルなのだ。

オルフェーヴルやロードカナロアと同世代に産まれた彼らは、「時代が悪かった」と表現されることもあるだろう。しかし歴史的名馬と共に走る、多くの馬たちの色彩の糸があって初めて、競馬という物語絵巻が織られるのだ。

サダムパテックという糸は、サダムパテックにしか紡げない。

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