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私的トウショウ5撰

20世紀後半の本邦競馬界を鮮やかに彩ったブリーダーがまた、ひとつその灯火を消すことになった。トウショウ牧場である。

血統更新が後手に回っただとか、育成の手法が保守的であったとか、もちろん探れば凋落の要素は複数あろう。ただ、メジロ牧場が幕を下ろすときも書いたが、こうしたオーナーブリーダーの撤退を表現するとき、私は「負けた」ではなく「役割を全うした」とするのがよりしっくりくると考える。 競馬の理(ことわり)は栄枯盛衰。その中で、未だ語りつがれるトウショウボーイの活躍と種牡馬としての影響力、名種牡馬*ダンディルートの導入、メジロやシンボリと手を携えて海外競馬へと挑んだ「日本ホースメンクラブ」の活動・・こうした営みは間違いなく、一つの時代を作り上げた欠かせないピースだったからだ。

さて、トウショウ牧場を振り返っての私的5撰を。リアルタイムで見た馬からのリストアップなので、トウショウボーイやエイティトウショウなどの名馬は対象としていないのでご了承を。

・シスタートウショウ(88生・牝・父トウショウボーイ)

空前のハイレベルと言われた91年牝馬クラシック、その桜花賞を圧倒的な強さで制した。あれから20年以上経った今でも、自分にとって最も強く美しい桜花賞馬はシスターである。オークスはハナ差と届かず、切ない想いで天を仰いだのも今となってはいい思い出だ。シラオキ牝系に*ダンディルート→トウショウボーイというトウショウ牧場のアイコン。

・ トウショウファルコ(86生・牡・父グリーングラス)

鮮やかな栗毛の馬体に派手な流星、金色のたてがみ。黒鹿毛が一番好きな自分も、絵画から抜け出てきたようなファルコのルックスには目を奪われずにいられなかった。*ソシアルバタフライの牝系で、父はトウショウボーイのライバルだったグリーングラス。Hyperionが色濃い、”サンデー以前”の味わい深い配合で、中山金杯とAJCCを勝った。

・スイープトウショウ(01生・牝・父*エンドスィープ)

21世紀にトウショウ牧場が送り出した、最もまばゆくそして最後の一等星。ヤマニンシュクルが好きだった身としては越えがたい強敵だったが、祖母のサマンサトウショウを思い出させる末脚の斬れは、見事のひとことだった。この馬にもしっかり*ダンディルートとトウショウボーイが入っている。

・ヌエボトウショウ(87生・牝・父トウショウゴッド)

サファイアSや愛知杯など重賞を4勝したほか、メジロマックイーンが降着した天皇賞でも5着に善戦した。トウショウ=角田騎手(現調教師)という印象は、この馬とシスターによって植え付けられたものだ。牝系はPretty pollyに遡上する*ビバドンナを祖とし、ヌエボの子孫にはトウショウギアやトウショウアンドレなどが出た。

・トウショウシロッコ(03生・牡・父アドマイヤベガ)

この馬には*ダンディルートも*ソシアルバタフライもトウショウボーイも入っていない。重賞の常連として掲示板に乗ることなんと16回、しかし最後までタイトルを獲ることはできなかった。20世紀に自らを輝かせた大いなる遺産を使い尽くしたトウショウ牧場が、新たなる地平を模索していた時期の象徴に思えて、想い出深い一頭。

次点

・トウショウフリート
*ソシアルバタフライ3×3。重賞未勝利ながら11戦7勝、東京ダート1400でレコードを叩きだし、底を見せないまま引退した逸材だった。

番外

・ウオッカ
この女傑も、出自をトウショウ牝系に持つ(祖母がシスタートウショウの全姉エナジートウショウ)。サンデーの血を持たずともあれだけのパフォーマンスを披瀝できるのは、ボトムラインの豊穣を示唆していよう。

最後に

一昨年、トウショウ好きの友人とともに牧場を見学させていただいたのは良い思い出になった。雨の中で嘶くスイープトウショウ、歳を重ねても美しいシスタートウショウ。
山深いトウショウ牧場で紡がれてきた物語の、今後も語り部の一端でありたいと、僭越ながら思っている。

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