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マーティンボロの広い空

ニュージーランドの首都ウェリントンから北東に車を走らせ、タラルア山脈の深い山道を抜けると、広い空に抱かれた風景が広がる。そのワイララパ地方の小都市マーティンボロが名を知らしめるのは、フランスのブルゴーニュ地方に酷似した気候が作り出すブドウ、そしてブドウから作られるワインのクオリティの高さゆえだ。

過日、このワイン産地名を馬名由来とするマーティンボロの種牡馬入りが報じられた。繋養されるのはフランスのHaras de Grandcampとのことで、トルコで活躍中のスマートロビンに次いでのディープ産駒種牡馬の海外進出ということになる。

キズナやエイシンヒカリ、Beauty Parlour、Akihiroなどのディープ産駒がフランスでポテンシャルを披瀝したことももちろんであるが、一方でマーティンボロの場合は母系の優秀さも彼の地に請われる大きな要因になったことは間違いないだろう。

4代母Balladeは子孫に、Glorious Song、*シングスピール、Rahy、Devil’s Bag、Saint Ballado、Rakeenなどの名馬を量産し、今更その優秀さを語るまでもない名繁殖。本邦でもダノンシャンティやレディバラード、ヴィルシーナ&ヴィブロス姉妹が名を連ねる。

今回マーティンボロの種牡馬入りに関わったエージェントは、2年前からディープインパクト産駒種牡馬の導入を狙っていたことを明らかにしつつ、ヌレイエフやブラグルを含んだ母系の血、2000Mで見せたスピードを、同馬の魅力として列挙している。

マーティンボロが珍しい8月生まれなのは、オーストラリアへの輸出を念頭において南半球時間で母*ハルーワソングに種付けをしたためで、これは熱心なファンには知られた話だろう。結局その目論見は馬インフルエンザに起因する検疫の厳格化などにより実現しなかったのだが、ニュージーランドの地名を名に授かり、遅生まれのハンデを克服して活躍した結果、ヨーロッパで新たなステップを踏むことになるのだから、面白いものだ。

 

ワイン生産国としては後発組のニュージーランドは、恵まれた自然条件を背景に、近年注目を集めているようだ。マーティンボロの他にも有力な産地はいくつもあり、調べているとブレニム(Blenheim)やヘイスティングス(Hastings)といった地名が目に留まるのが競馬ファンの性というもの。前者は1930年の英ダービー馬にして種牡馬としてもMahmoud(英ダービー)やWhirlaway(アメリカ3冠)などを出した。そして後者はベルモントSを制して後年アメリカでリーディングサイアーに輝いた。いずれも世界の競馬史、血統史に名を刻むレジェンドである。

今はマーティンボロをそんな名馬たちに比肩するわけにはいくまいが、ハットトリックの仔Dabirsimや、ゴルディコヴァを破った短距離王Dream Aheadらも繋養される牧場で、種牡馬としてどのような結果を出すのか、ワインの熟成を待つように、楽しみにすることにしよう。

そして自分たちの街の名が大レースを制した父として世界に轟く日がきたら、マーティンボロの人々はきっと驚き、それから誇らしく広い空を見上げるのだろう。

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