気まぐれな間欠泉
京都記念は、サトノクラウンが先行力を活かしてマカヒキらを押さえ込み、見事な連覇となった。今ではすっかり冬の風物詩として定着したその京都記念だが、1983年までは春と秋に開催されていた事を知るファンも今では少なくなった。
昭和17年5月に行わた第1回の京都記念で5着に入ったのが、クモゼキという牝馬だった。クモゼキはイギリス産の繁殖*カナデアンガールと、当時の大種牡馬*トウルヌソルとの間に生まれた鹿毛馬で、阪神記念を連覇するなどの活躍をした。引退後は第二カナデアンガールという名で、生まれ故郷・下河辺牧場の繁殖牝馬となっている。
この牝系は総じて華やかな発展をみせたわけではないが、点在する活躍馬には個性的な名が並ぶ。第二カナデアンガールの孫にあたるタカマガハラは、南関東でデビューした後に中央入りして天皇賞馬まで上り詰めた叩きげで、さらに1962年にはワシントンDC国際に招待されてアメリカ遠征まで果たしている。日本産馬が海外の招待レースに出走したのはこのタカマガハラが初めてだった。
同じように地方出身から立身出世を果たしてJRAの重賞ウイナー(ダービー卿CT)となり、香港マイルの前身である香港ボウルで海外遠征を果たしたトモエリージェントもこの牝系の出だ。
見事な末脚で2006年の桜花賞を制したキストゥヘヴンは、第二カナデアンガールの妹第五カナデアンガールの末裔である。
静寂の時を経て唐突に活躍馬が姿をあらわすその様は、誰しも予測できない間隔で噴出を起こす間欠泉のようだ。
そして第二カナデアンガールの仔第二クモゼキから、*ソロナウェー→トウショウボーイ→*ラシアンルーブル→*スキヤンと累代されてきたのが、テイクザケイク。そこに*プリサイスエンドを配して生まれた馬が、今週行われるフェブラリーSに有力馬として出走するカフジテイクというわけだ。
*プリサイスエンドはNijinskyやNijinsky的な血を持つ牝馬との相性が良いことで知られ、グロリアスノアやロラパルーザ、トキノゲンジなど活躍馬の多くがこのパターンで生まれている。テイクザケイクもそれに漏れずNijinsky3✕3、さらに言えば*ラシアンルーブル≒Videoの2✕2という大胆な組成になる。カフジテイクは非常に興味深い血統の持ち主だと言えよう。
社台という大河とは一線を画して下河辺牧場とヒダカファームが守ってきたその間欠泉は、冬の府中に熱泉を吹き出すことができるのか。長い直線に注目したい。
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