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オセアニアで咲いた薔薇

オーストラリアに移籍した日本産馬ブレイブスマッシュが、過日のフューチュリティステークス(G1・芝1400)を制した。これまで高額賞金レースのジ・エベレストでの3着やC.F.オーアS(G1)2着などの実績を残していたが、これが7戦目でウィアー厩舎での初勝利となる。

ブレイブスマッシュは、近年急増しているオセアニアへの移籍馬の中でもなかなか趣深い血統背景を持っている。母系はダイワメジャーはダイワスカーレット、ヴァーミリアンなどを輩出する*スカーレットインク系で、累代が*ノーザンテーストにリアルシャダイと80~90年代の懐かしい社台の香り。そこにトウカイテイオーが配されたのが母のトーセンスマッシュだった。

個人的には、競馬ファンとしての原点であり到達点もあったトウカイテイオーの名が、海外G1勝ち馬の血統表の中に在るという時点で満腹ではある。

一方、ブレイブスマッシュの父・トーセンファントムは社台ファーム産のネオユニヴァース産駒で、東スポ杯2歳Sで2着したのが目立つ程度だったが、島川オーナーのほぼ自家種牡馬として血を繋いだ。

トーセンファントムはこれまた社台Fが導入した*ノーベンバーローズ系が出自である。薔薇一族といえばなかなかG1に届かずにローズキングダムでようやく勲章を手中に収めた*ローザネイ牝系が有名だが、*ノーベンバーローズも「もうひとつの薔薇一族」として知られる存在だ。

クリスマスローズとエリザベスローズ姉妹は素質を感じさせながらも大成できず、14勝を積み上げたリミットレスビッドもG1には手が届かなかった。クラシックを期待されたアグネスゴールドやフサイチゼノンも大輪は咲かすには至らなかった。

結局、未だに牝系としてはG1ホースが出ていない*ノーベンバーローズ系ではあるが、トーセンファントムが父として海外G1の勝ち馬を出すいう実に意外な結果が、今般のブレイブスマッシュの勝利ということになる。

しかし考えてみれば、フサイチゼノンはアメリカのドライスデール厩舎に転厩して引退後も当地で種牡馬になったし、アグネスゴールドも種牡馬としてアメリカに輸出され、その後トレードされた南米ブラジルで重賞馬を量産して成功している。リミットレスビッドも韓国に輸出された。この一族の「薔薇」が、日本で蓄えた力を世界各地で花開かせる品種なのだとすれば、その系譜であるブレイブスマッシュの栄冠は、決して不可思議なものではないのかもしれない。

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