語り継ぎたいヒーロー列伝(後)
第3位を発表する前に、列伝に入っていない名馬についても触れておきたい。例えば歴史的スプリンターのサクラバクシンオーや悲運の快速馬サイレンススズカ、牝馬3冠スティルインラブらの名がない。また1970年生まれ以降のJRA顕彰馬の中では唯一、日本調教馬の地平を切り開いた*エルコンドルパサーが漏れている。それぞれ理由はあろうが、何かの機会に制作されてもよいと思うところはある。
第3位
ハーツクライ(2006年) 『進化する王者、世界の主役』
ジャスタウェイ(2014年) 『世界一の称号、父子の覇道』
これは父と子のセットで選出したい。府中本町から東京競馬場への通路にポスターが並んで掲示されている両作品は、居並ぶ名馬の中でも異彩を放っている。辿った道筋こそ違えど、ハーツもジャスタウェイも府中でその潜在能力を解き放ち、世界の頂きに足を踏み入れた。その物語性を、シンクロさせた写真(ドバイ出走時)とコピーで見事に表現していて、月並みな表現ではあるが、非常にカッコ良いポスターなのである。さりげなく、勝負服の色が背景と馬名ロゴのモチーフにされているとところも好きな点。
第2位
アパパネ(2010年) 『可憐な翼を、大きく広げて』
最初はノーマークだったのだが、今回の記事を書くにあたり全作品を見直していて、気に入ってしまったのがアパパネだった。まず何よりレース後の昂ぶりと容貌の可憐さとが同居した表情が良いし、馬名(アパパネ=ハワイの赤い鳥)をモチーフにしたコピーも彼女の持つ雰囲気や存在感をしなやかに表現している。それを馬服と同じ緋色のトーンでまとめた本作は、いつまでも眺めていられるような完成度の高さを感じるのだ。近年では最も好きな一枚。
第1位
タマモクロス(1989年) 『風か光か』
タマモクロスはオグリキャップらと闘いを繰り広げて競馬ブームの先駆となった名馬。そのスマートな芦毛の馬体とグレイソヴリン系らしい鋭い末脚を「風か光」と問われれば、風でもあり光でもあったと答える他はない。たった4文字、しかしこれ以上ない秀逸なコピーなのである。使われている写真は引退レースとなった有馬記念での勇姿。もう少し早く競馬に触れていればこの馬を直に見られたのに・・そう思わされる吸引力のある作品で、長年自分の中のナンバーワンが揺るがない。
近年のヒーロー列伝はややクドいというか、コピーも写真も狙いすぎている作品が多いように感じてしまう(最新作のオジュウチョウサンなどは割と好きな部類だが)。
これからも、眺めていて高揚感や感傷を喚起されるような、ステキなポスターが制作されることを期待している。
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