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2021年3月

角居厩舎 思い出の馬 5撰

今年は定年を待たずして角居勝彦調教師が引退された。新たな目標に向けての潔い卒業ではあるが、いち競馬ファンとしては角居師ほどの実績とスキルを持つ傑物を失うのは、何とも惜しいという感情を拭いきれないのも事実だ。さて、名馬の宝庫・角居厩舎から、筆者思い出の5頭を。

第5位 デルタブルース(01年産・父ダンスインザダーク)
ステイヤーとしての資質が花開いた菊花賞も見事なレースだったが、何と言ってもメルボルンカップだろう。オーストラリアの国民的ビッグレースを日本調教馬が勝つという想像ができなかったから、喜びよりも「えっ!?」という驚きだったことを覚えている。

第4位 ブルーイレブン(00年産・父サッカーボーイ)
Wordenの4*5・6の激しい気性で、名手・武豊をして「僕には無理」と言わしめたクセ馬。しかしその後、見事に立て直して再び重賞を勝たせた軌跡は、若き角居師の苦悩と才能とを表現している。サンデーもミスプロも含まない血統は種牡馬としてみたかった一頭だ。

第3位 トゥエルフスナイト(07産・父キングカメハメハ)
シーザリオの初仔である本馬は仕上がりが遅れ、3歳9月にようやくデビューして見事に勝利。この1戦だけで引退となったが、母の繁殖としての底しれぬポテンシャルを予見させ、後のエピファネイアやリオンディーズ、サートゥルナーリアを導いたとも言えるあのレースは忘れられない。

第2位 シャケトラ(13年産・父マンハッタンカフェ)
中長距離の覇権を期待される中、調教中の故障でこの世を去った素質馬。漆黒の馬体も血統背景も好きで、無条件に応援していたから、あの知らせはショックだった。最後のレースとなった阪神大賞典、唸る手応えの4コーナーは痺れた。

第1位 ウオッカ(04年産・父タニノギムレット)
タニノ同士の美しい配合から生まれた、稀代の名牝。敗戦も少なくないキャリアだが、鮮烈のダービー、驚異の安田記念、情念の天皇賞など、記憶に残るレースが多い。中でも最後の勝利となったJCは、早め先頭からゴールまでしのぎきったその頑張りに、自分の馬券を忘れて見入ってしまった。

もちろんこの他にも、ヴィクトワールピサやカネヒキリ、ルーラーシップなど印象深い名馬は数え切れない。ご自身が述懐されるように短距離の活躍は少ないものの、所属馬それぞれが個性的だったように感じる。平成の競馬史を彩る鮮やかな色彩こそが角居厩舎であり、その功績は決して色褪せず語り継がれるだろう。

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